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ここんとこ日鉄にってつ、とお子様うつたかに大騒ぎしてますが、SSは現代です(笑)。
いや日鉄まじ萌えしてるんだけど、資料が不十分なので小説では手はつけられない(苦笑)
仕方がないので萌えをお絵かきして昇華してるのです。
連休後半でちょっと体調崩したんで、その時ふとうつたか変換した話。
まあお約束っちゃお約束な話です。ほのかに日鉄時代がよぎるのはやはり萌えのせい(笑)
そういえばSCCで配ってたペーパーが途中で配布終了になってしまったんでサイトに!って言われたんだけど、問題はアレ18禁てことで。このまま載せるわけにも行かないんでどうしようか検討中。
しかし一般避けのパス制限はできても年齢的制限はなかなか掛けにくいんだよなあ…はてさて。
どなたかいい案あったら教えてください(他力本願)
「お、京浜東北、奇遇じゃん」
京浜東北が自分の路線に乗り込み、終点大宮へ到着すると、ちょうどホームから階段を上がってきたところで見慣れた顔と出くわした。
長身でオレンジ色の派手な制服。ちょっと目つきは悪いが人柄はおおむね良い、京浜東北に声をかけた青年の名前は高崎線。京浜東北と同じく、JRの路線を運行している身である。
高崎はスカイブルーの制服を見つけると、顔に笑みを浮かべ小走りに駆け寄ってきた。
高崎はどちらかといえばいつでも元気な方だが、また今日はやけに機嫌がよい。少しオーバーなくらいの陽気さだが、何かいいことでもあったのだろうか。
「なぁ昼飯食った?まだなら一緒に食いに行こうぜ」
乗客で混雑するコンコースの天井から釣り下げられている時計の針は午後1時5分。一般的な昼休み時間を避けつつ昼食を取るにはちょうどいい時間だった。
京浜東北は昼食に行くことについては異論はなかったが、しかし面子に疑問を感じて首を傾げる。
「いいけど、今日は宇都宮は一緒じゃないんだ?珍しいね」
「ん?いや、アイツにはさっきメールした」
6分着だから、もう着くぜ―――と3、4番線へと降りる階段に高崎が視線を送ると、ほどなくして乗客が次々と上がってきた。その中に紛れて階段を上るオレンジ色が目に入る。
高崎はそのオレンジめがけて手を振った。
「おー、宇都宮ー」
その声かはたまた振った手が視界に入ったのか、宇都宮がこちらに目を向けた。そうしてうっすらと笑みを浮かべかけ―――やめた。
多分、高崎の隣に京浜東北がいることに気付いたからだろう。
嬉しいのに他人には絶対にそういうところを見せない、素直じゃないのだ宇都宮という男は。
宇都宮は笑顔の代わりに呆れ顔を作ると、階段を上がりきって改札に向かう人の群れを避けながらこちらへとやってきた。
「子供じゃないんだから、恥ずかしい呼び方しないでよね」
「何だよ、すぐわかっただろっ」
「君もいたんだ京浜東北」
「たまたまだけどね。君がいるとわかってたら遠慮したのに」
京浜東北は溜息と共に本音を漏らした。本当に、この二人と一緒に昼食なんて気が重すぎる。社員食堂で偶然一緒になったのならまだしも、京浜東北だって何も好き好んで当てられに行くほど酔狂ではない。
「何だよ、たまにはいいじゃんっ。行こうぜ京浜東北っ」
高崎が子供のように駄々をこね京浜東北の腕を引いた。
「う、うんわかったからそんなしがみつかないで」
何だ、今日はずいぶんと高崎はテンションが高いらしい。何をはしゃいでいるんだろうか。
と、思ったら京浜東北のすぐ真横からオレンジ色の手が伸びてきた。
振り向くと、顔を厳しくした宇都宮が京浜東北の腕につがみついていた高崎を引きはがしにかかっていた。
乱暴に高崎を引き寄せるのに、京浜東北が眉をしかめる。
「ちょっと、何もそんな強く引っ張らなくても…」
ちょっと腕に絡みついたくらいで苛々するなんて、嫉妬深いにもほどがある。
ところが宇都宮はそのまま高崎の額に手をやると、ぴたりと掌で押さえつけた。
「…ちょっと熱っぽいね。具合悪いなら早退しなよ高崎」
「………うー、何でわかるのお前」
ぴしりと言い放って高崎を諭す宇都宮に、高崎は途端にふてくされた声で口を尖らせた。それまでの陽気さがまるで嘘のように。
え?と事態を飲み込めずきょとん、としている京浜東北に宇都宮がくるりと振り返る。
「高崎、熱があるみたいだから帰らせるよ。あと調整しておいて」
そう言って事務的な処理を京浜東北に任せ、高崎の脇に腕を回す宇都宮に、京浜東北は眼鏡の奥で瞬きした。
「え、それはいいけど…」
何で高崎の具合が悪いのがわかったんだ、と目線だけで問いかけると、宇都宮はそれこそ不敵な笑みを浮かべた。
「高崎はね、昔から異様にテンションが高い時は、大抵具合が悪い時なんだよね。熱が出て頭が更におかしくなってるのかもしれないけど」
ねぇ?と宇都宮が横で抱き留めている高崎に同意を求めれば、高崎は「おかしくなんてなってねえよ、馬鹿」と火照った頬を膨らませた。
宇都宮にバレてしまったからなのだろう、高崎は気を緩めるとくったりと宇都宮に身体を預けていた。本当は立っているのも辛かったのだろう。
言われてみれば、顔は少し赤いし目はやや潤んで、ぼんやりしてる感じがする。だがそれは「具合が悪いから」と言われたから意識して見れば、の話で、実際に言われるまで気付かなかった京浜東北は宇都宮の観察力に舌を巻いた。
いや、他ならぬ高崎のことだから、か。
これがたとえば自分が具合悪いのを隠していたとしても、宇都宮は指摘などしないだろう、と京浜東北は思った。体調不良を隠しているならそれはおそらく休めば仕事が滞るからで、社会人である以上仕事と体調を秤にかけてどちらを優先するかを判断するだけの分別がある、とみなされているからだ。まあそれ以前に京浜東北の具合が良かろうと悪かろうと、自分には関係がないと考えている節はなきにしもあらず、だが。
宇都宮が気にかけているのは高崎一人、だけ。
高崎が素直に身体を預けてくれているのに喜びを感じているのか、珍しく宇都宮もまんざらでもない顔をしていた。
「それじゃ、後は頼んだよ。僕は宿舎まで付き添うから」
「了解。気をつけて」
京浜東北が了承の意を示すと、宇都宮は高崎に歩くよう促し、それはそれは甲斐甲斐しく介助しながら上がってきた階段をまた降りていった。
「……過保護」
残された京浜東北は小さく肩を竦めると、二つ並んだオレンジの背中を見送りながら、ぼそりと呟いたのだった。
宇都宮に連れられ宿舎に戻ってくると、高崎は安心したのかくったりと宇都宮の肩に頭を乗せ身体の力が抜けた。
玄関を潜ったところで不意に片腕に重みが加わるのに、宇都宮が眉を顰める。
「ちょっと、ベッドに行くまで気を抜かないでよ。同じ体型を抱えていくの、大変なんだからね」
「いっつも…俺がやだ、って言ってもやるくせに…」
「そういうことして欲しいんだったら、抱いていってあげてもいいけど?」
どうする?と宇都宮が真顔で問うと、高崎はしねぇよ、とそっぽを向いて靴を脱ぎのろのろと部屋を這うようにしてベッドに辿り着いた。
そのままぼすりと前のめりに倒れ込むと、シーツの冷たさが心地よいのかふぅ、と熱っぽい溜息を吐く。
「ちゃんと制服脱いで、寝間着に着替えて。汗かいてるならタオル持ってくるから」
宇都宮はシーツに懐く高崎にそうてきぱきと指示すると、その間に自分は台所に向かった。薬を飲ませるのに、何か胃に入れておかないといけない。昼食前に帰ってきたから胃の中は空っぽのはずだ。
食材のない高崎の部屋で大したものは作れないのでおかゆと薬を準備して、寝室に運ぶと高崎はベッドに俯せになってうとうととしていた。言われたとおりに寝間着には着替えていたが、熱いのか前をはだけさせシーツに押しつけている。脱いだ制服は畳む余力がなく床に脱ぎ捨てられていた。
少し熱が上がってきたのだろうか、先ほどより顔が赤く、息が浅い。
宇都宮が床に膝を付いて顔を覗き込むと、とろとろとしていた高崎の瞼がぼんやり開いた。
「うつ…」
「ご飯、食べられる?薬飲まないといけないから、少しでもお腹に入れとかないと」
「………寝たい…」
食欲魔神の高崎が食べ物より睡眠を優先するくらい、身体が怠いのだろう。寝られるなら寝た方がいい、と判断して宇都宮は高崎の頭をそっと撫でた。
「じゃあおかゆ横に置いておくから。起きたら食べて、薬飲んで。汗が気持ち悪かったらちゃんと拭くんだよ」
紅潮する頬にも掌を添わせると、宇都宮の低い体温が心地よいのか高崎はその手の上に己の手を重ねて、ふにゃりと緩く微笑んだ。
その笑顔があまりにしどけなくて、宇都宮の心臓が跳ねる。思わず喉が鳴り慌てて宇都宮は高崎から視線を外した。
それが例えば寝ぼけているとか酔っぱらいだとかなら、誘ってるものとして遠慮なく頂戴する。だがいくら何でも病人を組み敷くのは、いかに宇都宮といえど躊躇われた。
普段そんな風に誘ってもくれないくせに、こういう時だけそんな顔見せるなんて卑怯だ。
顔を合わせられない宇都宮が高崎の手と頬に挟まった己の手を引き抜こうとする。
ところが、その途端高崎の手がきゅっと力を込めてきて、宇都宮の手を拘束した。
「行っちゃ…やだ…」
高崎は宇都宮の手を引き寄せると、うー、と子供がむずかるように唸った。
「何言ってるの、僕は仕事に戻らないといけないんだよ。君が休んだ分のツケも回ってくるんだからね」
それとも遅れてツケられた分も後で全部返してくれるの、と敢えて宇都宮が脅すと、頭が働いていないのか、それでもいい、と呟いて高崎は宇都宮の手を離さなかった。
「昔は手ぇ繋いでてくれた…じゃんよ…」
「それはまだ子どもの頃でしょ、君いまいくつだと思ってるの」
「冷蔵庫の…ビール全部やるから…ここに居ろよ…」
何がなんでも高崎は宇都宮に居てもらいたいらしく、高崎にとっては破格の条件を持ち出してまで引き留めようとする。
「…冷蔵庫のビールなんて1本しかないくせに」
高崎の冷蔵庫は先ほどお粥を作るのに開いて中身を見た。ビール一本で買収だなんて、図々しいにもほどがある。
とはいえ宇都宮はため息を一つ零すと諦めてベッドの縁を背もたれに、床に腰を下ろした。
離してくれないといっても病人の力だ、無理矢理手を引き抜こうと思えばできた。だが熱があるとはいえ自分に甘える高崎を見捨てることはできなくて、結局高崎のわがままをきいてやることにした。
「…早く治しなよ」
君がいつもみたいに照れたり怒ったりしてくれないと、こっちまで調子が狂う。
単に掴まえられているだけの手を一旦離して、指を絡めるようにして握り直してやると、高崎は安心したようにその手を引き寄せ微睡み出す。
熱が下がったらどんな風にツケを払ってもらおうか、そんな物騒な事を脳裏で描きながら、脳内とは裏腹に宇都宮はすぐに寝息を立てる高崎を優しい瞳で見つめるのだった。
京浜東北が自分の路線に乗り込み、終点大宮へ到着すると、ちょうどホームから階段を上がってきたところで見慣れた顔と出くわした。
長身でオレンジ色の派手な制服。ちょっと目つきは悪いが人柄はおおむね良い、京浜東北に声をかけた青年の名前は高崎線。京浜東北と同じく、JRの路線を運行している身である。
高崎はスカイブルーの制服を見つけると、顔に笑みを浮かべ小走りに駆け寄ってきた。
高崎はどちらかといえばいつでも元気な方だが、また今日はやけに機嫌がよい。少しオーバーなくらいの陽気さだが、何かいいことでもあったのだろうか。
「なぁ昼飯食った?まだなら一緒に食いに行こうぜ」
乗客で混雑するコンコースの天井から釣り下げられている時計の針は午後1時5分。一般的な昼休み時間を避けつつ昼食を取るにはちょうどいい時間だった。
京浜東北は昼食に行くことについては異論はなかったが、しかし面子に疑問を感じて首を傾げる。
「いいけど、今日は宇都宮は一緒じゃないんだ?珍しいね」
「ん?いや、アイツにはさっきメールした」
6分着だから、もう着くぜ―――と3、4番線へと降りる階段に高崎が視線を送ると、ほどなくして乗客が次々と上がってきた。その中に紛れて階段を上るオレンジ色が目に入る。
高崎はそのオレンジめがけて手を振った。
「おー、宇都宮ー」
その声かはたまた振った手が視界に入ったのか、宇都宮がこちらに目を向けた。そうしてうっすらと笑みを浮かべかけ―――やめた。
多分、高崎の隣に京浜東北がいることに気付いたからだろう。
嬉しいのに他人には絶対にそういうところを見せない、素直じゃないのだ宇都宮という男は。
宇都宮は笑顔の代わりに呆れ顔を作ると、階段を上がりきって改札に向かう人の群れを避けながらこちらへとやってきた。
「子供じゃないんだから、恥ずかしい呼び方しないでよね」
「何だよ、すぐわかっただろっ」
「君もいたんだ京浜東北」
「たまたまだけどね。君がいるとわかってたら遠慮したのに」
京浜東北は溜息と共に本音を漏らした。本当に、この二人と一緒に昼食なんて気が重すぎる。社員食堂で偶然一緒になったのならまだしも、京浜東北だって何も好き好んで当てられに行くほど酔狂ではない。
「何だよ、たまにはいいじゃんっ。行こうぜ京浜東北っ」
高崎が子供のように駄々をこね京浜東北の腕を引いた。
「う、うんわかったからそんなしがみつかないで」
何だ、今日はずいぶんと高崎はテンションが高いらしい。何をはしゃいでいるんだろうか。
と、思ったら京浜東北のすぐ真横からオレンジ色の手が伸びてきた。
振り向くと、顔を厳しくした宇都宮が京浜東北の腕につがみついていた高崎を引きはがしにかかっていた。
乱暴に高崎を引き寄せるのに、京浜東北が眉をしかめる。
「ちょっと、何もそんな強く引っ張らなくても…」
ちょっと腕に絡みついたくらいで苛々するなんて、嫉妬深いにもほどがある。
ところが宇都宮はそのまま高崎の額に手をやると、ぴたりと掌で押さえつけた。
「…ちょっと熱っぽいね。具合悪いなら早退しなよ高崎」
「………うー、何でわかるのお前」
ぴしりと言い放って高崎を諭す宇都宮に、高崎は途端にふてくされた声で口を尖らせた。それまでの陽気さがまるで嘘のように。
え?と事態を飲み込めずきょとん、としている京浜東北に宇都宮がくるりと振り返る。
「高崎、熱があるみたいだから帰らせるよ。あと調整しておいて」
そう言って事務的な処理を京浜東北に任せ、高崎の脇に腕を回す宇都宮に、京浜東北は眼鏡の奥で瞬きした。
「え、それはいいけど…」
何で高崎の具合が悪いのがわかったんだ、と目線だけで問いかけると、宇都宮はそれこそ不敵な笑みを浮かべた。
「高崎はね、昔から異様にテンションが高い時は、大抵具合が悪い時なんだよね。熱が出て頭が更におかしくなってるのかもしれないけど」
ねぇ?と宇都宮が横で抱き留めている高崎に同意を求めれば、高崎は「おかしくなんてなってねえよ、馬鹿」と火照った頬を膨らませた。
宇都宮にバレてしまったからなのだろう、高崎は気を緩めるとくったりと宇都宮に身体を預けていた。本当は立っているのも辛かったのだろう。
言われてみれば、顔は少し赤いし目はやや潤んで、ぼんやりしてる感じがする。だがそれは「具合が悪いから」と言われたから意識して見れば、の話で、実際に言われるまで気付かなかった京浜東北は宇都宮の観察力に舌を巻いた。
いや、他ならぬ高崎のことだから、か。
これがたとえば自分が具合悪いのを隠していたとしても、宇都宮は指摘などしないだろう、と京浜東北は思った。体調不良を隠しているならそれはおそらく休めば仕事が滞るからで、社会人である以上仕事と体調を秤にかけてどちらを優先するかを判断するだけの分別がある、とみなされているからだ。まあそれ以前に京浜東北の具合が良かろうと悪かろうと、自分には関係がないと考えている節はなきにしもあらず、だが。
宇都宮が気にかけているのは高崎一人、だけ。
高崎が素直に身体を預けてくれているのに喜びを感じているのか、珍しく宇都宮もまんざらでもない顔をしていた。
「それじゃ、後は頼んだよ。僕は宿舎まで付き添うから」
「了解。気をつけて」
京浜東北が了承の意を示すと、宇都宮は高崎に歩くよう促し、それはそれは甲斐甲斐しく介助しながら上がってきた階段をまた降りていった。
「……過保護」
残された京浜東北は小さく肩を竦めると、二つ並んだオレンジの背中を見送りながら、ぼそりと呟いたのだった。
宇都宮に連れられ宿舎に戻ってくると、高崎は安心したのかくったりと宇都宮の肩に頭を乗せ身体の力が抜けた。
玄関を潜ったところで不意に片腕に重みが加わるのに、宇都宮が眉を顰める。
「ちょっと、ベッドに行くまで気を抜かないでよ。同じ体型を抱えていくの、大変なんだからね」
「いっつも…俺がやだ、って言ってもやるくせに…」
「そういうことして欲しいんだったら、抱いていってあげてもいいけど?」
どうする?と宇都宮が真顔で問うと、高崎はしねぇよ、とそっぽを向いて靴を脱ぎのろのろと部屋を這うようにしてベッドに辿り着いた。
そのままぼすりと前のめりに倒れ込むと、シーツの冷たさが心地よいのかふぅ、と熱っぽい溜息を吐く。
「ちゃんと制服脱いで、寝間着に着替えて。汗かいてるならタオル持ってくるから」
宇都宮はシーツに懐く高崎にそうてきぱきと指示すると、その間に自分は台所に向かった。薬を飲ませるのに、何か胃に入れておかないといけない。昼食前に帰ってきたから胃の中は空っぽのはずだ。
食材のない高崎の部屋で大したものは作れないのでおかゆと薬を準備して、寝室に運ぶと高崎はベッドに俯せになってうとうととしていた。言われたとおりに寝間着には着替えていたが、熱いのか前をはだけさせシーツに押しつけている。脱いだ制服は畳む余力がなく床に脱ぎ捨てられていた。
少し熱が上がってきたのだろうか、先ほどより顔が赤く、息が浅い。
宇都宮が床に膝を付いて顔を覗き込むと、とろとろとしていた高崎の瞼がぼんやり開いた。
「うつ…」
「ご飯、食べられる?薬飲まないといけないから、少しでもお腹に入れとかないと」
「………寝たい…」
食欲魔神の高崎が食べ物より睡眠を優先するくらい、身体が怠いのだろう。寝られるなら寝た方がいい、と判断して宇都宮は高崎の頭をそっと撫でた。
「じゃあおかゆ横に置いておくから。起きたら食べて、薬飲んで。汗が気持ち悪かったらちゃんと拭くんだよ」
紅潮する頬にも掌を添わせると、宇都宮の低い体温が心地よいのか高崎はその手の上に己の手を重ねて、ふにゃりと緩く微笑んだ。
その笑顔があまりにしどけなくて、宇都宮の心臓が跳ねる。思わず喉が鳴り慌てて宇都宮は高崎から視線を外した。
それが例えば寝ぼけているとか酔っぱらいだとかなら、誘ってるものとして遠慮なく頂戴する。だがいくら何でも病人を組み敷くのは、いかに宇都宮といえど躊躇われた。
普段そんな風に誘ってもくれないくせに、こういう時だけそんな顔見せるなんて卑怯だ。
顔を合わせられない宇都宮が高崎の手と頬に挟まった己の手を引き抜こうとする。
ところが、その途端高崎の手がきゅっと力を込めてきて、宇都宮の手を拘束した。
「行っちゃ…やだ…」
高崎は宇都宮の手を引き寄せると、うー、と子供がむずかるように唸った。
「何言ってるの、僕は仕事に戻らないといけないんだよ。君が休んだ分のツケも回ってくるんだからね」
それとも遅れてツケられた分も後で全部返してくれるの、と敢えて宇都宮が脅すと、頭が働いていないのか、それでもいい、と呟いて高崎は宇都宮の手を離さなかった。
「昔は手ぇ繋いでてくれた…じゃんよ…」
「それはまだ子どもの頃でしょ、君いまいくつだと思ってるの」
「冷蔵庫の…ビール全部やるから…ここに居ろよ…」
何がなんでも高崎は宇都宮に居てもらいたいらしく、高崎にとっては破格の条件を持ち出してまで引き留めようとする。
「…冷蔵庫のビールなんて1本しかないくせに」
高崎の冷蔵庫は先ほどお粥を作るのに開いて中身を見た。ビール一本で買収だなんて、図々しいにもほどがある。
とはいえ宇都宮はため息を一つ零すと諦めてベッドの縁を背もたれに、床に腰を下ろした。
離してくれないといっても病人の力だ、無理矢理手を引き抜こうと思えばできた。だが熱があるとはいえ自分に甘える高崎を見捨てることはできなくて、結局高崎のわがままをきいてやることにした。
「…早く治しなよ」
君がいつもみたいに照れたり怒ったりしてくれないと、こっちまで調子が狂う。
単に掴まえられているだけの手を一旦離して、指を絡めるようにして握り直してやると、高崎は安心したようにその手を引き寄せ微睡み出す。
熱が下がったらどんな風にツケを払ってもらおうか、そんな物騒な事を脳裏で描きながら、脳内とは裏腹に宇都宮はすぐに寝息を立てる高崎を優しい瞳で見つめるのだった。
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