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紙/端/国体劇場(青/春/鉄/道)様の二次創作ブログ。 初めていらした方はまず「このブログについて」をごらんください。
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MK5(マジでキスする5秒前?)<古

です。
ラストとてもブログに載せる量じゃない長さですがこれで一応このシリーズは完結です。
書き始めた頃はそんなつもりなかったのに、ひょんなことからなれそめになってしまった…(苦笑)。
宇都宮の独占欲の強さが好き。高崎は苦労するよなぁ、絶対……。

おとんの上越新幹線土産はありませんでした。なんてこったい!
いわく「上越新幹線て名前ついたお土産なんてなかったよ」とのことで。
ああ、まあ多分饅頭とかお菓子とか、そういうものを探してたんだろうなぁ…
私も言ってみたものの上越新幹線土産って何があるのか知らなかったし(爆)
想像としては新幹線の電車の形したストラップとかプリントされたタオルとかね?
そんなのがあるのかなぁ、と期待していたわけですが見事にスルーでした。
まあそんな小学生の男の子が欲しがるようなもんをいい歳した娘が欲しいとは
思ってなかったんだろうな。うん、多分私も御本家様ハマるまで欲しいとは思わなかったよ(苦笑)。

今、本気で迷ってるのはうつたか線の鉄道模型を手に入れるかどうかです。
本物の電車を描くことは多分ないと思うのだけれど。

そんなわけで脱線しましたが本編ラストです。
あ、キスの描写が入っているので、苦手な方は避けてください。(今更だが)

宇都宮は深呼吸をしてから、ノブを回しゆっくりとドアを開けた。
すると、ドアの開閉音に振り返ってこちらを窺う高崎の目とばっちり目が合った。
その刹那、高崎がビクリと震え瞳に戸惑いの色が浮かぶ。室内の空気が一瞬にして緊張感を孕んだ。
ああ、まるで怯えたウサギみたいだ。高崎の警戒する様子が小動物のそれに似ていて、宇都宮の嗜虐心をそそる。いや待てウサギは苛めたらダメか、ウチの快速を担ってくれてるんだし。
宇都宮はドアを後ろ手に閉めると、ひとまず不自然なくらいに害のない笑顔で高崎に微笑みかけ、彼の警戒を緩める方策にでた。
「休憩中?」
「あ…ああ」
宇都宮はソファにゆっくりと近付いていった。一歩一歩近寄る毎に、高崎が心なしか後ずさっているのがおかしい。そんなに怯えなくてもいいのに、取って食ったりするわけじゃないんだし。
宇都宮はそんな高崎の警戒心など気付かない風を装い、同じ色の制服の隣に腰を下ろした。座る瞬間に肩が触れ合うと、高崎の身体がビクリと震える。
ソファが沈むと、まるで反動のように高崎が立ち上がった。
「お、俺そろそろ行かないと…」
「逃げるの?」
宇都宮に背を向け、その場を離れる常套句を口にして高崎がそそくさとそこから離れようとする。その背中を刺すように、口調こそ柔らかいが冷気を含んだ問いが投げかけられた。
「別に、逃げてなんて…」
速攻で図星を突かれ、逃げ場を失った高崎はお約束のようにどもりながらその場に立ち尽くす。
「じゃあ座りなよ。―――ボクに、言いたいことがあるんでしょ?」
「……お前、聞いてたのか…?」
「部屋に入ろうとしたら耳に入ってきたものを聞いてしまったのは、不可抗力だよ」
「………………」
京浜東北に相談に乗ってもらっていたことを聞かれ、高崎はバツが悪そうな顔で動こうとしなかった。だが宇都宮が自分の隣をポンポンと叩き、座るよう促すと、渋々数歩戻ってきて指定された場所に腰を下ろした。
嫌なら宇都宮の言葉など無視して部屋を出て行けばいいのに。逃げようと思った相手でもいわれるままに行動してしまうあたり高崎は素直だ。そしてあれだけ何度も「嫌がらせ」されたのに、それでもなお疑うことをしない無防備さ。
その無防備なところこそが高崎を可愛いと思う一面であり、―――同時に宇都宮を苛立たせる原因でもあった。キミはもっと警戒心を覚えた方がいい、だからあんな男に目を付けられるんだ。
高崎は宇都宮の隣に腰掛けたはいいが、幾分緊張した面持ちであちこちに視線を彷徨わせ落ち着きがなかった。言いたいことがある、否、聞かなければならないことがあるはずなのに、いつまでたっても切り出そうとしない。どう話を持っていけばいいのか、迷っているようだった。チラリとこちらを見ては、またそっぽを向いて溜息をつく。
まったく、もどかしくて見ていられない。焦らすのは好きだが焦らされるのは好きじゃない。
最初はどう切り出すのか興味をもって見つめていた宇都宮がイラッとして行動を起こすのと、漸く意を決して話し出そうと高崎が顔を宇都宮に向けるのと。
その瞬間が、重なった。
「あの、さ―――」
宇都宮の方へ向き直り、話しかけた高崎の言葉は不意に視界が大きくぶれたことによって途切れた。
肩を押されぐらりと身体が傾く。気づけば目には天井が映っていて、背中は革張りの弾力に支えられている。高崎はあっけなくソファに押し倒されていた。
その視界に割り込むように宇都宮が覆い被さり、顔が触れそうなくらい至近距離で薄く微笑んだ。
「この前の宿題は、わかったの?」
「しゅ…くだい、て何だよ…」
「キスの意味」
唐突な話題に高崎が押し倒されたことに抗議するのも忘れ首を傾げる。宇都宮は笑顔のままそう囁くと、顔をさらに寄せた。
ちゅ、とわざと音を立て宇都宮に唇を啄まれる。あまりにも自然で淀みのないその行為に高崎は一瞬反応に遅れ、そののち盛大に顔を真っ赤にした。
「おっ……お前、また……ッ」
「宿題そのものを忘れてるみたいだったから、思い出させてあげようと思って」
「わ、忘れてねえよっ!つか、お前そこどけって!」
高崎は仰向けに倒れた体勢から宇都宮を押しのけ起きあがろうともがいた。だが宇都宮にその手首を捕まれると、高崎の頭上でまとめ上げ拘束される。手首を封じられてもなお、高崎は身体を捻ってそこから逃れようと暴れたが、力を入れているはずなのに宇都宮をどかすことはおろか、手首を外すことすらできなかった。
「離せよ、これじゃ話し合いにならないだろっ」
「ボクはちゃんとキミの話を聞いてるよ。ほら、やってきたんならちゃんと答えなよ?宿題」
口調だけはまるで家庭教師のように宇都宮が高崎に迫る。視線が合うと、高崎は一層目許を赤らめ目を逸らした。
「………言わない」
高崎はつん、と顔を背けると口を閉ざした。考えろ、とは言われたが答えを出せとは言われていない。大体、何で自分が強制的にこんなことを言わされなければならないのか。自分を組み敷き、いいように弄ぼうとしている宇都宮に、せめてもの抵抗で高崎は彼の問いを拒否した。
すると、宇都宮はその微笑みを再び高崎の顔に近づけ、声を低め囁いた。
「宿題忘れた子にはおしおきするよ」
それは脅しでも警告でもなく。言うなり、高崎は唇を塞がれ呼吸を止められた。
「ん、んぅ…っ…」
重ねられた唇から舌が潜り込んできて、高崎のそれに絡みつく。柔らかな感触が唇を挟み、吸い付き、舐められる。深い口づけは甘い痺れを生み、高崎の脳を蕩かした。
宇都宮のキスに酔わされた高崎は次第に抵抗するのも忘れ、瞼を閉じ彼のなすがままに唇を与えた。
宇都宮は、高崎が抵抗しなくてもキスするのをやめない。
口付けられながら、それは高崎の中で急速に一つの結論へと方向性をもった。
もし宇都宮が自分を嫌いで、嫌がらせとしてやっているのなら、それは高崎がキスに嫌悪感、もしくは不快感を感じていなければ意味がない。最初の時は抵抗したから、宇都宮が余計面白がってるんだと思った。
でも、今みたいに抵抗しなくても、宇都宮はキスすることをやめない。むしろ、抵抗しないのをいいことに口腔を舐め回し口唇を吸い上げ高崎の唇を堪能している。
それは自分を不快にさせようとかそういう目的ではなく、―――単純に宇都宮が、自分にキスしたいと思っているから?
唐突に目の前が開けた高崎は文字通り瞼を開いた。と、その気配で宇都宮の唇が離れていく。
「…………………お前、俺のこと……」
急に確信を持ち言いかけた言葉は、しかしそこで途切れた。
が、紅梅に染まった顔と、戸惑うその表情が言葉よりも雄弁に物語っている。同性相手に「好きなのか」なんて質問、普通ならしにくいに違いない。
だが目の前にいる男は、それを察しはしても暗黙の了解で汲んでやるほど優しい男ではなかった。
「ボクが、キミのことを、何?」
「―――ッ…」
言いにくいことを敢えて言わせようとする宇都宮を高崎は睨み付けた。が、それで怯むような相手ではない。逆に笑顔に気圧されて、しぶしぶと先を続けざるを得なかった。
「……好…き、なのか…?」
トクン、と心臓が鳴った。
それがただの友情で使われる「好き」ではないことくらい、高崎でもわかっている。いや、キスの意味なんて、最初からわかってたことだったのだ。だからこそ高崎は初めて宇都宮にキスされそうになった時に抵抗したわけだし、京浜東北に指摘されても否定したいと思った。そもそも高崎がそれを嫌がらせと思ったのも、好きという感情を伴わないまま、宇都宮が無理に口づけてきた、と思ったからだ。
でも今は、そうじゃない、と思う。
少なくとも嫌がらせじゃない。宇都宮は自分にキスしたいからしていて、それはつまりおそらく―――
「好き」だからなのだ、と。
ただそれをようやく悟りはしたが、言葉に出した途端にその意味が急に現実味を帯びて高崎の上に襲いかかった。思うだけなら自由だ、しかし口にしてしまったらもう元には戻せない。
『キミはどうしたいの』
不意に、京浜東北の言葉が高崎の脳裏によみがえった。
もし、宇都宮が本当に自分を好きで、この問いかけに「好きだ」と答えられてしまったら―――自分はどうしたらいいのだろう。
嫌われたくない、とは思っている。だって同じ架線を共有する仲間で、同じ北関東の鉄道を担う同士なのだ。確かにたくさん迷惑もかけているけれど―――見放さないで欲しい。
だけど、じゃあ「好きだ」と言われて、その後は?普通に男女の関係でいうならお付き合いして、結婚して、子どもが生まれて―――?いや、それは無理だ。
自分達は路線だし、第一同性だ―――。でも、好きとか嫌いとかの感情はあるわけで、好きなら相手に触れたいと思う気持ちもある―――。
と、そこで高崎は初めて宇都宮に出された宿題の意味を悟った。
ああ、そうか。好きで、相手に触れたくて、だからキスするのだ。
つまりもし宇都宮が高崎を好きで、それでキスしてきたのなら、それは彼が自分に触れたいのだということ。好きだからキスするとはわかっていながら、その意味を表面的にしか理解していなかった。
その真意に気づいた瞬間、高崎の全身がドクンと脈打った。
「触れたい…のか」
思いついてしまった言葉が、考えるよりも先に口をつく。答えを返すよりも先に新たな質問が重ねられて、宇都宮は軽く目を瞠った。
真っ直ぐに見上げられた瞳に胸の裡に秘めていた願望を暴かれ、宇都宮は息を呑んだ。
まさか、その言葉が高崎の口からもたらされようとは、夢にも思っていなかった。
正直、高崎にそこまで見抜かれるとは想定していなかったのだ。京浜東北の余計なアドバイスもあって、自分が高崎を「好き」なんじゃないか、というところまではこぎ着けられるだろうとは予想していたが、長年の付き合いでそれ以深く突っ込んで考える性格じゃない、と踏んでいた。
だからある意味高崎が「好きなのか」と問いかけてくることは想定内で、それならまだはぐらかして冗談にしてしまうこともできる、と最後の最後まで逃げ道を残しておいた。高崎の問いに即答しなかったのは、今のこの瞬間までどちらの道を取るべきか、迷っていたからだ。
だからまさか、高崎がそこまで深い理解に辿り着くなんて思いもしなかった。―――図らずも、高崎自身にその退路を断たれてしまうことになろうとは。
宇都宮はくらり、と目眩がしそうになった。急激に喉に渇きを覚える。
目の前に好きな人がいて、その人を組み敷いていて、その瞳に見つめられながら「触れたいか」なんて問われたりしたら。
どんな鉄の理性だって本能に打ち負かされるに決まってる。
「………触れたい、よ」
掠れた声で、宇都宮は初めて本心を白状した。
高崎の手首を拘束していた手を離し、その頬にするりと指先を添わせる。ゆっくりと撫でる仕草はこわごわと震えていて、宇都宮の余裕の無さを表していた。
動作だけではない。いつものヒトを食ったような態度も、他人を見下したような視線も表情も、今は別人のように潜んでいて、ただ瞳が切羽詰まったように高崎を見つめていた。
いくら高崎だって、そんな宇都宮の見たこともない態度を目の当たりにして、それを冗談と思えるはずがない。
「好き、なんだな」
「…うん」
高崎の確認に宇都宮が素直に頷く。いつもこうなら誰も疑うことはしないだろうに、本当に宇都宮は扱いが厄介だ、と高崎は思った。
「高崎に、触れたい。触れて、キスして、抱いて、自分のことだけ見つめさせて、自分のことしか考えられないくらいにメチャメチャにしてやりたい」
「……なんか最後の方物騒なんだけど」
「触っても、いい?」
宇都宮が高崎の顔を覗き込んでくる。まったくこちらの話は聞いてない、が、そのいつになく真剣な眼差しに高崎は溜息を一つつくと「いいよ」と承諾を与えた。こんな素直でストレートな宇都宮を見たことがなくて、調子が狂う。
すると宇都宮が子供のように嬉しそうに、高崎の顔を撫で、唇を寄せてきた。頬からこめかみを伝い、髪に指を差し入れ頭の形を確かめられる。一方で反対側の頬に唇を落とされるのを皮切りに、瞼、目尻、こめかみ、顎のラインと順に口付けられ最後に唇の上に被さってきた。
すぐに舌が潜り込んできて、中をくまなく探索にかかる。
「ぅん…」
舌を捕まえられ、吐き損ねた息が鼻を抜ける。その甘い響きに欲を出したのか、宇都宮はより一層深く口づけてきて高崎を朦朧とさせ甘い吐息を紡がせた。
「ねぇ、もうボクのものにしていいよね…?」
キスの合間に高崎がとろりとした眼で見上げると、宇都宮が見たこともないくらい優しい表情で自分を見つめていた。
「……それって……」
「高崎の全部が欲しい、って意味。心も、身体も全部」
さらりと告げられた重大発言に、高崎は湯気を噴き出しそうなほど真っ赤になった。コイツ、本心を隠さなくなった途端グレードアップしてやがる。最初っからそうやって素直に言えば、こんなにうだうだ悩まなくても済んだのに。いや、いきなり「自分が欲しい」とか言われても困るだろうけど。
「お前、いきなり欲張りになったな…」
「そうでもないよ、今までずっと我慢してただけで。これでもまだ序の口なくらいだ」
にっこりと微笑む宇都宮の脳裏で何が繰り広げられているのか、高崎は流石にそれ以上突っ込む気になれなかった。自分の身に何が降りかかろうとしているのか、恐ろしくて聞く気にはなれない。
宇都宮はその間も愛おしそうに高崎の頬を、髪を撫で、耳朶を甘噛みしている。その痛いでもくすぐったいでもない感触に高崎は首を竦めた。
宇都宮はそのむずがる様子に口の端を上向けながら、耳許に直接吹き込むように囁く。
「拒否しない、ってことは高崎もボクの恋人でいい、って承諾したってことだからね?」
「……ん?」
突然湧いて出た耳慣れない単語に、高崎はきょとんとして宇都宮を見上げた。あどけなくも見えるその表情に宇都宮は微笑してちょん、と軽く口付けた。
「そうでしょ?その気がないなら、抵抗して拒絶するのが当り前だもの。でもキミは抵抗しなかったし、ボクの触ってもいいかという質問にも『いい』と答えた。それは恋人になってもいい、という返事だと受け取るよ普通は」
事実、今もキスしてるのに高崎は宇都宮を退けようともしない。手首はとっくに自由で、押し返すことも暴れることもできるはずなのに。
「……そういうことになる、のか?」
そういえば、今日は最初の不意打ちを除けば、宇都宮にキスされてもあまり抵抗した覚えがない。別に宇都宮に恐怖を感じて萎縮していたとか、そういう雰囲気でもなかった。単純に慣れてしまった、のかもしれないが。
実際のところ、高崎は宇都宮の核心はついたものの、それがどういうことに繋がるのかまでは把握していなかった。いや、宇都宮が自分に触れたいという想いは充分にわかったけれど。キスも、その先も求めていることも理解はしているけれど。
それに対して自分がどうしたいかまでは、まだ答えが出ていなかったのだ。けして高崎は、自ら宇都宮を恋人にしたい、と言ったわけではないのだから。だから実はまだ宇都宮が告白しただけで、高崎が「YES」と言わない限り、関係は成立しない。
だがそんな高崎の隙を見逃すほど宇都宮は甘い男ではなかった。
掌は高崎の顔を、頭を愛撫しながら睦言を囁くように高崎を諭しにかかる。
「ボクにキスされても嫌がらないじゃない。こんな風に押し倒されて、触られて、『欲しい』って囁かれても。普通同じ男にそんなことされたら殴る蹴る、の抵抗をしてもおかしくないでしょ。だけどキミは抵抗しない。こんなの本能だからね、意識してなくたって不快なら咄嗟に手が出てくるもんなんだよ。それがない、ってことはキミの中にも『ボクを受け入れてもいい』という気持ちがある、ということになる。それはつまりキミはそんなことをされてもボクのことを嫌いではない、すなわち好きだということなんだけどね」
宇都宮は一気に捲し立てた。論理的に高崎の心理を本人の代わりに解説してやることで、高崎を納得させ自分も宇都宮が好きだったのだ、と思い込ませる。いささか三段論法のような強引さがあるが、高崎は多分論理が飛躍しすぎだということには気付くまい。
「キミはボクに『触れていい』という許可を与えてくれた。それはキミが無意識のうちに、ボクとそういう関係になってもいい、と認めたからだ。自分ではわかってないかもしれないけど、キミはボクを選んだんだよ、高崎」
宇都宮は高崎に反論を抱かせる余地を与えず畳み込んだ。これで元が素直に出来ている高崎は、おそらく宇都宮の言葉を真に受けて「自分も本当は宇都宮が好きだったのだ」という暗示にかかるだろう。
案の定、高崎はまだ疑念は残りつつも「……そうなのか、な」と納得しつつある。本当に疑うことを知らない男だ、苛立つこともあるけれど今はそれが幸いしている。
「そうだよ」
と、宇都宮は肯定して高崎の両頬を掌で包み込み、とどめの一言を付け加えた。ここまできて獲物を逃がしはしない。確実に仕留めるために、笑顔で高崎に言葉の縄をかける。
「ボク達、晴れて恋人同士になったわけだね」
「あ、あー……えっと……そういうこと、なのか」
その言葉に、高崎は頬を火照らせ急に視線を彷徨わせ始めた。
これは戸惑っているのか、照れているのか。こんな恋人宣言よりもっと濃密なキスを繰り返しても平気だったくせに、言葉一つで恥ずかしがるところが可愛い。高崎の初々しい態度に宇都宮は顔が緩むのを止められなかった。
にやにやと笑む宇都宮が額をくっつけて顔を間近に寄せると、高崎は急に大人しくなった。
制服越しに重なった胸板が、ドクドクと早打ちしているのがわかる。宇都宮をそれまでの仲間ではなく「恋人」として意識しているのが丸わかりで、いじりたい、いや抱きしめたい衝動に駆られる。
そこで本性をあらわしてせっかく捕まえた高崎に逃げられても困るので、今日のところは我慢して、宇都宮は高崎の腰に腕を回して抱きしめるだけに留めておいた。
「これからもよろしくね、高崎」
「……ああ、うん」
宇都宮が改めて高崎に挨拶すると、高崎もぎこちなく同意を返した。
ついでにキスの一つも奪うと、言葉よりもはるかに能弁に受け入れの意志が伝わってくるのに、宇都宮は至福の笑みを漏らすと時間の許すまで高崎の唇を貪りにかかるのだった。

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素敵でした
はじめまして。
サーチから、うつたかを求めて来た者です。
こちらの高崎のイジられっぷりと、宇都宮のドSっぷりにノックアウトされました。
素敵な時間をありがとうございました。
うつたか最高です!!
いい 2009/08/25(Tue)02:13:10 EDIT | RES
ありがとうございます!
はじめまして、管理人の彼居です。
ようこそいらっしゃいました!そしてコメントありがとうございました!
こんな新参者にコメントをいただけて光栄です。
自分でも初めて書いたうつたか話でしたので、こんなんでいいのかなぁ、と不安でもあったのですが、気に入っていただければ幸いです。
細々とですがこれからも活動していこうと思っていますので、よろしければまたお時間のある時にでも遊びにいらしてください。
ありがとうございました!
【2009/08/25 11:22】

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