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うへぇ、ようやく後半戦終わりました。
途中から思ってもみないシリアスになってきて、どうしちゃったんだ宇都宮、って書いてる方も焦りました(爆)。
終わるに終われなくて結局このシリーズは5(分量的には6なんだけど5と6が分断できない)になりました。
ああ、次はバカみたいに騙される高崎が書きたい(笑)。
甘いのが好きなんですが、そうすると宇都宮が溺愛モードに入ってしまうので彼のSっぷりが発揮できなかったり色々とジレンマです。
と、いうわけで本編3です。
途中から思ってもみないシリアスになってきて、どうしちゃったんだ宇都宮、って書いてる方も焦りました(爆)。
終わるに終われなくて結局このシリーズは5(分量的には6なんだけど5と6が分断できない)になりました。
ああ、次はバカみたいに騙される高崎が書きたい(笑)。
甘いのが好きなんですが、そうすると宇都宮が溺愛モードに入ってしまうので彼のSっぷりが発揮できなかったり色々とジレンマです。
と、いうわけで本編3です。
「…なぁ、キスの意味って何だろう」
突然ぽつりと吐かれた高崎の呟きに、京浜東北は飲みかけていたコーヒーを持つ手が固まった。
休憩室の傍ら、声の主であるソファに腰掛けた橙色の制服を見遣れば、当人は紙コップを両掌で包み込むように持ちぼんやりとどこともなく視線をさ迷わせている。
運悪く室内に高崎の他には他の路線は誰も居らず、自分しかいない。となれば、当然疑問形のそれは自分に向けられたものである。独り言のようにも聞こえたので放置しようかとも思ったのだが、しばらく京浜東北が返答せずにいると、高崎の顔が上がってじっとこちらを見られてしまった。
又しても高崎の相談役に当たってしまった京浜東北は、コーヒーをテーブルに置くと、小さくため息をついた。
「…普通は、愛情表現なんじゃないの」
何でこんなこと答えなきゃなんないんだ、と内心呆れつつ、ごく一般的な回答をする。
長い人生の中、ヒト様の恋愛相談も人生設計相談も色々経験してきた。だが、今時幼稚園児でも知っているようなことを、まさかいい年をした大人の同僚に説明する羽目になろうとは思わなかった。
「愛情表現……」
京浜東北の回答を反芻するように、高崎が繰り返す。おそらく今頃その言葉の意味がぐるぐると彼の頭の中を回っているのだろうが、その答えは彼の中で納得が行くものになるのだろうか。
「あとは西洋では挨拶でもするね」
まあ細かく分析すれば、それに表される感情はいくらでもあるだろうけど、京浜東北はそこまで追究しないことにした。大まかに分ければその2つだ。
それにどのみち言ったところで高崎の思惑に適う答えなどないに決まっているから。
実のところ、高崎が何に悩んでいるのか、大方の予想は付いていた。
どうせまた宇都宮のことだろう。数日前に高崎自身が彼にキスされた、と吐露したのを京浜東北は聞いている。その後高崎が機嫌の悪い宇都宮に連行されていく現場に遭遇もした。彼らが消えた昇降口の扉の向こうで派手な物音がしていたからきっと何かあったのだろうと推測はできるが、あれ以降高崎からも宇都宮からも何の話も聞いてはいない。宇都宮は何があろうと京浜東北に打ち明けることはしないだろうし、高崎は―――こうやって二人きりでもない限り、話しにくいのかもしれない。
が、あの一件以来2人の様子がぎくしゃくしているのを見れば、まあ何かしら一悶着あったんだろう、とは推察していた。
京浜東北が高崎の問いに答えてから、しばし沈黙が続く。思考を巡らせているのか高崎は何も発さず、その間京浜東北は手元のコーヒーに口をつけ、憂いを帯びる高崎を視界から外すように窓の外に目を向けた。
今日も空は自分の制服のような青で、鳥が軽やかに舞っていた。呆れるくらいに爽やかで、本当、この室内に流れる空気とは大違いだ。
やがて、思考がまとまったのか高崎の口が開き、途切れていた会話が再開された。
「…なぁ、……嫌がらせのためだけにキ…」
「しない」
即答。まだ全部言ってないのに、と少しだけ高崎が口を尖らせる。
皆まで言われずとも、高崎の辿り着いた結論などお見通しである。そもそも最初の質問からして、いくら鈍感な高崎だって知らないわけがないのだ。それを敢えて訊いてきたのは、そこから導かれる結論を否定したいからに他ならない。
「一般的に、日本の概念でいうならキスは愛情表現または外国人の挨拶。それ以外の何物でもない」
「何で言い切れるんだよ」
「考えてもみなよ。他人の口に、口付けるんだよ?世の中回し飲みだってできない人がいるのに、直接なんて普通なら気持ち悪いでしょ。ましてやそれを嫌いな人になんてできる?いくら嫌がらせっていったって、自分もダメージ受けてまですることじゃないでしょ」
しかも相手はあの、宇都宮だ。彼には潔癖の気があり、べたべたと他人に接触することを厭う。自分の汗すら気持ち悪くて、夏場は閉口しているくらいだ。そんな彼がもろに粘膜を接触させる真似をするなど、いくらSでも考えがたい。
大体、宇都宮が接触を許しているのは高崎だけで、その事を考えても高崎が彼にとって特別な存在であることは明白なのだが、当の本人はそこに気付いていない。
「……じゃあ何でみんなキスなんてするんだよ……」
京浜東北に諭されて、高崎がふてくされたように愚痴る。
「だから、好きな人としかしない、って言ってるの」
少なくとも、多かれ少なかれ好意のある人間としか。まあ本当はそうでないケースもないではないけれど、今の高崎には言う必要のないことだ。
京浜東北に断言されると、高崎は一瞬しょげた顔を見せ、それから頬をうっすらと赤く染めた。オレンジの背中を丸めて己の膝を見つめる。
「………でもそれだと、アイツが……」
高崎が弾き出された答えを口にしようとして、だが躊躇いがあるのか声が弱り尻すぼみになっていく。
もういい加減認めてしまえばいいのに。わかりきった答えから目を背けようとする高崎の態度に、京浜東北は軽く苛立ちを覚えた。
「そんなに気になるなら、直接聞けばいいじゃない。宇都宮にさ」
すると京浜東北の言葉にぎょっとして高崎が首を横に振った。
「そんなこと、できるかよ!」
「何でさ?そこで憶測にしかすぎないまま悩んでるより、よっぽど建設的だと思うけど」
「聞いたところでアイツが素直に言うと思うか?」
「言わないだろうね」
間違っても素直に告白するタマではないだろう、あの男は。どうせ曖昧な返事ではぐらかして、煙に巻くに決まっている。
「なら、聞いても意味ないだろ……」
はあ、と幸せが逃げそうな溜息が高崎から漏れる。
溜息をつきたいのはこちらだ、と京浜東北は頭が痛くなりそうだった。何を間違えてこんな恋愛相談に巻き込まれてしまったのか。いや恋愛、ですらないのか。実際はどうかともかく、少なくとも高崎にその自覚はなさそうだ。
いくら在来線のまとめ役だって、個々のプライベートまで面倒は見きれない。
一瞬悩める高崎を置いて部屋を出て行こうかという考えが脳をよぎった。
が、持ち前のリーダーシップか、はたまた人の良さか、結局京浜東北は高崎を見捨てる事はしなかった。
京浜東北はしばし高崎を見つめ、やがて深い溜息をつくと眉間に皺を寄せながら手にしていたコーヒーの残りを一気に煽った。
空になった紙コップをテーブルに置くと、コン、と軽い音がする。
「あのさ」
京浜東北が呼び掛けると、憔悴した高崎がのろのろと顔を上げた。
「キミは一体どうしたいの」
すると、高崎はきょとん、と目を丸くして首を傾げた。
「俺…?」
「そう、キミだよ。この際宇都宮がどう思ってるかは置いといて、キミは彼に好かれたいの嫌われたいの」
京浜東北が苛々するのは、高崎自身がどうしたいのかがわからないからだ。先日は嫌われてるのかも、と悩み、じゃあ好かれてるといえばそれを否定したがる。
「そりゃ……誰だって嫌われたいとは思わないだろ」
「だったら宇都宮に好かれてる、それでいいじゃないか。悩むことなんてないだろ。嫌いで嫌がらせされてるんじゃない、あれは歪んでるけど愛情表現だ、それで解決だろう?でもさっきのキミはどう考えても『好かれてない』という結論に持っていきたがってた。それって矛盾しない?」
ビシ、と京浜東北が人差し指を立て高崎を指し示す。京浜東北に一気に畳み込まれ高崎は言葉に詰まった。
「そ…だけど、ものには限度があるだろ?」
「好かれてはいたいけど悪戯もされたくないしキスもされたくない?」
「うん」
「それは不可能だね」
あっさりと言い切る京浜東北に、高崎は目を見開き、何でだよ、とスカイブルーの制服に食ってかかった。
高崎にしてみれば理由もわからずいい迷惑、なのかもしれないが、第三者が見ればあれは一目瞭然。
「だってあれは宇都宮の、まあ言わば趣味だもの。高崎いじりっていうの?誰が何を言おうと多分やめるつもりはないと思うよ」
「ヒトを勝手に趣味に巻き込むな!」
「僕に言われてもね。そう思うなら、それこそ宇都宮に直接訴えなよ。あるいはキミ自身のお願いなら、聞いてくれるかもしれないよ?」
僕に文句を言うのは筋違いだよ、と京浜東北は最後に釘を差しイスから立ち上がった。まあおそらくは喩え高崎本人の訴えであろうと、宇都宮の『趣味』が止まるとは思えないが。京浜東北は内心確信していたが、それは口に出すことはしなかった。
京浜東北は空になった紙コップを再び手に取ると、シンク近くのゴミ箱に捨てに行き、その足で出口に向かった。高崎を見捨てるのではなく、そろそろタイムリミットだ。
もっともこれ以上高崎に言うこともないし、ここから先は他人がどうこうしていい問題じゃない。高崎が自分で判断して、自分で結論を出さなければ意味がない。
京浜東北はドアの手前でくるりと振りかえると、俯いて押し黙る高崎に最後のアドバイスを贈ってやった。
「そろそろ僕は休憩終わるから行くよ。いずれにしても、宇都宮とちゃんと話したら?アイツの悪戯がエスカレートしてるのは確かだし、イヤならイヤでガツン、と言ってやりなよ」
そう言い残して、京浜東北は休憩室を後にした。
突然ぽつりと吐かれた高崎の呟きに、京浜東北は飲みかけていたコーヒーを持つ手が固まった。
休憩室の傍ら、声の主であるソファに腰掛けた橙色の制服を見遣れば、当人は紙コップを両掌で包み込むように持ちぼんやりとどこともなく視線をさ迷わせている。
運悪く室内に高崎の他には他の路線は誰も居らず、自分しかいない。となれば、当然疑問形のそれは自分に向けられたものである。独り言のようにも聞こえたので放置しようかとも思ったのだが、しばらく京浜東北が返答せずにいると、高崎の顔が上がってじっとこちらを見られてしまった。
又しても高崎の相談役に当たってしまった京浜東北は、コーヒーをテーブルに置くと、小さくため息をついた。
「…普通は、愛情表現なんじゃないの」
何でこんなこと答えなきゃなんないんだ、と内心呆れつつ、ごく一般的な回答をする。
長い人生の中、ヒト様の恋愛相談も人生設計相談も色々経験してきた。だが、今時幼稚園児でも知っているようなことを、まさかいい年をした大人の同僚に説明する羽目になろうとは思わなかった。
「愛情表現……」
京浜東北の回答を反芻するように、高崎が繰り返す。おそらく今頃その言葉の意味がぐるぐると彼の頭の中を回っているのだろうが、その答えは彼の中で納得が行くものになるのだろうか。
「あとは西洋では挨拶でもするね」
まあ細かく分析すれば、それに表される感情はいくらでもあるだろうけど、京浜東北はそこまで追究しないことにした。大まかに分ければその2つだ。
それにどのみち言ったところで高崎の思惑に適う答えなどないに決まっているから。
実のところ、高崎が何に悩んでいるのか、大方の予想は付いていた。
どうせまた宇都宮のことだろう。数日前に高崎自身が彼にキスされた、と吐露したのを京浜東北は聞いている。その後高崎が機嫌の悪い宇都宮に連行されていく現場に遭遇もした。彼らが消えた昇降口の扉の向こうで派手な物音がしていたからきっと何かあったのだろうと推測はできるが、あれ以降高崎からも宇都宮からも何の話も聞いてはいない。宇都宮は何があろうと京浜東北に打ち明けることはしないだろうし、高崎は―――こうやって二人きりでもない限り、話しにくいのかもしれない。
が、あの一件以来2人の様子がぎくしゃくしているのを見れば、まあ何かしら一悶着あったんだろう、とは推察していた。
京浜東北が高崎の問いに答えてから、しばし沈黙が続く。思考を巡らせているのか高崎は何も発さず、その間京浜東北は手元のコーヒーに口をつけ、憂いを帯びる高崎を視界から外すように窓の外に目を向けた。
今日も空は自分の制服のような青で、鳥が軽やかに舞っていた。呆れるくらいに爽やかで、本当、この室内に流れる空気とは大違いだ。
やがて、思考がまとまったのか高崎の口が開き、途切れていた会話が再開された。
「…なぁ、……嫌がらせのためだけにキ…」
「しない」
即答。まだ全部言ってないのに、と少しだけ高崎が口を尖らせる。
皆まで言われずとも、高崎の辿り着いた結論などお見通しである。そもそも最初の質問からして、いくら鈍感な高崎だって知らないわけがないのだ。それを敢えて訊いてきたのは、そこから導かれる結論を否定したいからに他ならない。
「一般的に、日本の概念でいうならキスは愛情表現または外国人の挨拶。それ以外の何物でもない」
「何で言い切れるんだよ」
「考えてもみなよ。他人の口に、口付けるんだよ?世の中回し飲みだってできない人がいるのに、直接なんて普通なら気持ち悪いでしょ。ましてやそれを嫌いな人になんてできる?いくら嫌がらせっていったって、自分もダメージ受けてまですることじゃないでしょ」
しかも相手はあの、宇都宮だ。彼には潔癖の気があり、べたべたと他人に接触することを厭う。自分の汗すら気持ち悪くて、夏場は閉口しているくらいだ。そんな彼がもろに粘膜を接触させる真似をするなど、いくらSでも考えがたい。
大体、宇都宮が接触を許しているのは高崎だけで、その事を考えても高崎が彼にとって特別な存在であることは明白なのだが、当の本人はそこに気付いていない。
「……じゃあ何でみんなキスなんてするんだよ……」
京浜東北に諭されて、高崎がふてくされたように愚痴る。
「だから、好きな人としかしない、って言ってるの」
少なくとも、多かれ少なかれ好意のある人間としか。まあ本当はそうでないケースもないではないけれど、今の高崎には言う必要のないことだ。
京浜東北に断言されると、高崎は一瞬しょげた顔を見せ、それから頬をうっすらと赤く染めた。オレンジの背中を丸めて己の膝を見つめる。
「………でもそれだと、アイツが……」
高崎が弾き出された答えを口にしようとして、だが躊躇いがあるのか声が弱り尻すぼみになっていく。
もういい加減認めてしまえばいいのに。わかりきった答えから目を背けようとする高崎の態度に、京浜東北は軽く苛立ちを覚えた。
「そんなに気になるなら、直接聞けばいいじゃない。宇都宮にさ」
すると京浜東北の言葉にぎょっとして高崎が首を横に振った。
「そんなこと、できるかよ!」
「何でさ?そこで憶測にしかすぎないまま悩んでるより、よっぽど建設的だと思うけど」
「聞いたところでアイツが素直に言うと思うか?」
「言わないだろうね」
間違っても素直に告白するタマではないだろう、あの男は。どうせ曖昧な返事ではぐらかして、煙に巻くに決まっている。
「なら、聞いても意味ないだろ……」
はあ、と幸せが逃げそうな溜息が高崎から漏れる。
溜息をつきたいのはこちらだ、と京浜東北は頭が痛くなりそうだった。何を間違えてこんな恋愛相談に巻き込まれてしまったのか。いや恋愛、ですらないのか。実際はどうかともかく、少なくとも高崎にその自覚はなさそうだ。
いくら在来線のまとめ役だって、個々のプライベートまで面倒は見きれない。
一瞬悩める高崎を置いて部屋を出て行こうかという考えが脳をよぎった。
が、持ち前のリーダーシップか、はたまた人の良さか、結局京浜東北は高崎を見捨てる事はしなかった。
京浜東北はしばし高崎を見つめ、やがて深い溜息をつくと眉間に皺を寄せながら手にしていたコーヒーの残りを一気に煽った。
空になった紙コップをテーブルに置くと、コン、と軽い音がする。
「あのさ」
京浜東北が呼び掛けると、憔悴した高崎がのろのろと顔を上げた。
「キミは一体どうしたいの」
すると、高崎はきょとん、と目を丸くして首を傾げた。
「俺…?」
「そう、キミだよ。この際宇都宮がどう思ってるかは置いといて、キミは彼に好かれたいの嫌われたいの」
京浜東北が苛々するのは、高崎自身がどうしたいのかがわからないからだ。先日は嫌われてるのかも、と悩み、じゃあ好かれてるといえばそれを否定したがる。
「そりゃ……誰だって嫌われたいとは思わないだろ」
「だったら宇都宮に好かれてる、それでいいじゃないか。悩むことなんてないだろ。嫌いで嫌がらせされてるんじゃない、あれは歪んでるけど愛情表現だ、それで解決だろう?でもさっきのキミはどう考えても『好かれてない』という結論に持っていきたがってた。それって矛盾しない?」
ビシ、と京浜東北が人差し指を立て高崎を指し示す。京浜東北に一気に畳み込まれ高崎は言葉に詰まった。
「そ…だけど、ものには限度があるだろ?」
「好かれてはいたいけど悪戯もされたくないしキスもされたくない?」
「うん」
「それは不可能だね」
あっさりと言い切る京浜東北に、高崎は目を見開き、何でだよ、とスカイブルーの制服に食ってかかった。
高崎にしてみれば理由もわからずいい迷惑、なのかもしれないが、第三者が見ればあれは一目瞭然。
「だってあれは宇都宮の、まあ言わば趣味だもの。高崎いじりっていうの?誰が何を言おうと多分やめるつもりはないと思うよ」
「ヒトを勝手に趣味に巻き込むな!」
「僕に言われてもね。そう思うなら、それこそ宇都宮に直接訴えなよ。あるいはキミ自身のお願いなら、聞いてくれるかもしれないよ?」
僕に文句を言うのは筋違いだよ、と京浜東北は最後に釘を差しイスから立ち上がった。まあおそらくは喩え高崎本人の訴えであろうと、宇都宮の『趣味』が止まるとは思えないが。京浜東北は内心確信していたが、それは口に出すことはしなかった。
京浜東北は空になった紙コップを再び手に取ると、シンク近くのゴミ箱に捨てに行き、その足で出口に向かった。高崎を見捨てるのではなく、そろそろタイムリミットだ。
もっともこれ以上高崎に言うこともないし、ここから先は他人がどうこうしていい問題じゃない。高崎が自分で判断して、自分で結論を出さなければ意味がない。
京浜東北はドアの手前でくるりと振りかえると、俯いて押し黙る高崎に最後のアドバイスを贈ってやった。
「そろそろ僕は休憩終わるから行くよ。いずれにしても、宇都宮とちゃんと話したら?アイツの悪戯がエスカレートしてるのは確かだし、イヤならイヤでガツン、と言ってやりなよ」
そう言い残して、京浜東北は休憩室を後にした。
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