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お月見SSうつたかver.です。 ……もう過ぎちゃったけど(笑)昨日と打って変わって今日は大雨ですよ。
十五夜昨日でよかったなー、とちょっと思ったりしました。
あれかな、陽海だとアダルトな雰囲気になるのにうつたかだとそうならないのは、やはり年齢の差だろうか。
(普段やってることはある意味うつたかのがアダルトなんだが)
くっついた時期はさておき付き合いの長さでいっても、うつたかのがむしろ熟年夫婦のような落ち着きがあっても不思議ではないんだが…落ち着きのない2人(笑)
十五夜昨日でよかったなー、とちょっと思ったりしました。
あれかな、陽海だとアダルトな雰囲気になるのにうつたかだとそうならないのは、やはり年齢の差だろうか。
(普段やってることはある意味うつたかのがアダルトなんだが)
くっついた時期はさておき付き合いの長さでいっても、うつたかのがむしろ熟年夫婦のような落ち着きがあっても不思議ではないんだが…落ち着きのない2人(笑)
「宇都宮ぁー、見ろよすっげぇ綺麗だぜ!」
串に刺さった団子を片手に、宿舎の窓際に陣取った高崎は子どもみたいにはしゃぎながら相方の名を呼んだ。
窓の外にはぽっかりと丸い月が浮かんでいる。先程まで雲が微妙にかかっていたのだが、今はそれが晴れて綺麗な正円を空に描いていた。
せっかくの月見なのだから、どうせなら綺麗に見えている方がいい。満月なんて月に一度はやってくるものなのだが、やっぱり秋の十五夜が晴れてくれれば嬉しい、と日本人として単純に思う。
「馬鹿みたいに夜中に叫ばないの。ご近所迷惑でしょ」
高崎に呼ばれた宇都宮がこちらは麦茶を注いだグラス2つを片手に1つずつ持ち、ゆっくり歩いてきて高崎の隣につけた。片方を差し出すと高崎が団子を頬張りながらそれに手を伸ばす。
片手が空いた宇都宮がその手で壁際のスイッチに触れると、室内の明りが消えより一層月明かりが強くなった。
それでも周囲のビルの窓には多くの明りが点いていて、せっかくの月光なのに存分に味わう、というわけにはいかなかった。ぼんやりと月を見上げながら高崎がぽつりと呟く。
「昔はさぁー…夜になったらほとんど明りなんてなくてさ、でもその代わり月と星の光がすごく綺麗だったよなー…。賑やかなとこは瓦斯灯があったけど、民家は夜になれば真っ暗だったし。大体今みたいに背の高い建物なんてなくて、空がいっぱいに広がってたからどこからでも月が見えたもんだよな」
「そうだね」
高崎の呟きに相槌を打ちながら、宇都宮もまた窓の外を見上げた。空は晴れているはずなのに星の瞬きが少ないのは満月に掻き消されているからだけではない。いつの間にか、この東京の空には星が少なくなっていた。星そのものがなくなったわけではないのに。
立ち並ぶビルの影にあちこちを切り取られた空に浮かぶ満月は、どこか窮屈そうな気がした。
「いつか休みが取れたら山か海にでも行って、広いところで星空を眺めて見ようか」
移りゆく時代。急激に始まった近代化から戦争を経、高度成長期を迎えて泡が弾け、そして現代に。宇都宮も高崎もこのめまぐるしい変化を見届けてきた。
変わることが悪いわけではない、もちろんその恩恵は自らの身にもたくさん受けているのだけれど―――同時に失ってしまったものも多い、と宇都宮は思う。
東京の空にもう星は戻ってこない。この街は眠らなくなってしまったから。
かつてそこに満天の星空があったことなど、知らなければそういうものだと認識して終わりなのだろうが、せめてそれを知っていた者としてはかけがえのないものを失ったのだ、という事を覚えていたい。
と、珍しく感傷的な気分になるのも、やはり今日が中秋の名月だからだろうか。
それくらい今晩の月は清かで、煌々として、忙しい時間の中で顧みない何かを思い起こさせるような魔力を秘めていた。案外、人が十五夜に月見をするのはそうした心を忘れないようにするためのイベントなのかもしれない。
が、そんな感傷とは全く無縁の者も中にはいるようで。
「なあ、お前のそれ、1つもらっていい?」
催促する声に月から目を離して隣に向けてみれば、高崎は団子の載った宇都宮の皿をじーっと見つめていた。
今晩の月見用にと用意した団子は大宮の駅ナカで購入したもので、高崎はみたらし、宇都宮はあんがついたものをそれぞれ選んだ。すでに自分の分の団子を食べ終えた高崎はそれでもまだ物足りないらしく、皿に残っている宇都宮の分に目をつけたようだった。
一気に現実に引き戻されて宇都宮が苦笑する。
「まったくキミは…花より団子、いや月より団子かい」
「だってこれ美味かったし。そっちのも、美味そうだなー…って…」
「キミ自分でみたらし選んだんでしょ。食べたかったんなら、こっち選べばいいじゃない」
「そうだけど一番はみたらしなんだよ、でも試したいってのもあるじゃん」
「わがままだなぁ」
うー、と餌を前に待てをさせられている犬のように、物欲しそうに高崎がちらちらと宇都宮を見遣ってくる。その様子は宇都宮の悪戯心をくすぐるには充分で、宇都宮は小さく肩を竦めると仕方ないなぁ、と高崎のわがままを受け入れてやった。表向きは。
「なら口開けて。食べさせてあげるから」
「ん、あー」
宇都宮の言葉通り素直に高崎が口を開ける。
宇都宮相手に正直に従うあたり、普段の高崎なら考えられないがこれも月の魔力かそれとも団子の魔法か。
何の疑いも持たず団子が口に入るのを待っている高崎に、宇都宮はそのまま身を乗り出すと高崎の唇を塞いで団子の代わりに自分の舌を押し込んでやるのだった。
串に刺さった団子を片手に、宿舎の窓際に陣取った高崎は子どもみたいにはしゃぎながら相方の名を呼んだ。
窓の外にはぽっかりと丸い月が浮かんでいる。先程まで雲が微妙にかかっていたのだが、今はそれが晴れて綺麗な正円を空に描いていた。
せっかくの月見なのだから、どうせなら綺麗に見えている方がいい。満月なんて月に一度はやってくるものなのだが、やっぱり秋の十五夜が晴れてくれれば嬉しい、と日本人として単純に思う。
「馬鹿みたいに夜中に叫ばないの。ご近所迷惑でしょ」
高崎に呼ばれた宇都宮がこちらは麦茶を注いだグラス2つを片手に1つずつ持ち、ゆっくり歩いてきて高崎の隣につけた。片方を差し出すと高崎が団子を頬張りながらそれに手を伸ばす。
片手が空いた宇都宮がその手で壁際のスイッチに触れると、室内の明りが消えより一層月明かりが強くなった。
それでも周囲のビルの窓には多くの明りが点いていて、せっかくの月光なのに存分に味わう、というわけにはいかなかった。ぼんやりと月を見上げながら高崎がぽつりと呟く。
「昔はさぁー…夜になったらほとんど明りなんてなくてさ、でもその代わり月と星の光がすごく綺麗だったよなー…。賑やかなとこは瓦斯灯があったけど、民家は夜になれば真っ暗だったし。大体今みたいに背の高い建物なんてなくて、空がいっぱいに広がってたからどこからでも月が見えたもんだよな」
「そうだね」
高崎の呟きに相槌を打ちながら、宇都宮もまた窓の外を見上げた。空は晴れているはずなのに星の瞬きが少ないのは満月に掻き消されているからだけではない。いつの間にか、この東京の空には星が少なくなっていた。星そのものがなくなったわけではないのに。
立ち並ぶビルの影にあちこちを切り取られた空に浮かぶ満月は、どこか窮屈そうな気がした。
「いつか休みが取れたら山か海にでも行って、広いところで星空を眺めて見ようか」
移りゆく時代。急激に始まった近代化から戦争を経、高度成長期を迎えて泡が弾け、そして現代に。宇都宮も高崎もこのめまぐるしい変化を見届けてきた。
変わることが悪いわけではない、もちろんその恩恵は自らの身にもたくさん受けているのだけれど―――同時に失ってしまったものも多い、と宇都宮は思う。
東京の空にもう星は戻ってこない。この街は眠らなくなってしまったから。
かつてそこに満天の星空があったことなど、知らなければそういうものだと認識して終わりなのだろうが、せめてそれを知っていた者としてはかけがえのないものを失ったのだ、という事を覚えていたい。
と、珍しく感傷的な気分になるのも、やはり今日が中秋の名月だからだろうか。
それくらい今晩の月は清かで、煌々として、忙しい時間の中で顧みない何かを思い起こさせるような魔力を秘めていた。案外、人が十五夜に月見をするのはそうした心を忘れないようにするためのイベントなのかもしれない。
が、そんな感傷とは全く無縁の者も中にはいるようで。
「なあ、お前のそれ、1つもらっていい?」
催促する声に月から目を離して隣に向けてみれば、高崎は団子の載った宇都宮の皿をじーっと見つめていた。
今晩の月見用にと用意した団子は大宮の駅ナカで購入したもので、高崎はみたらし、宇都宮はあんがついたものをそれぞれ選んだ。すでに自分の分の団子を食べ終えた高崎はそれでもまだ物足りないらしく、皿に残っている宇都宮の分に目をつけたようだった。
一気に現実に引き戻されて宇都宮が苦笑する。
「まったくキミは…花より団子、いや月より団子かい」
「だってこれ美味かったし。そっちのも、美味そうだなー…って…」
「キミ自分でみたらし選んだんでしょ。食べたかったんなら、こっち選べばいいじゃない」
「そうだけど一番はみたらしなんだよ、でも試したいってのもあるじゃん」
「わがままだなぁ」
うー、と餌を前に待てをさせられている犬のように、物欲しそうに高崎がちらちらと宇都宮を見遣ってくる。その様子は宇都宮の悪戯心をくすぐるには充分で、宇都宮は小さく肩を竦めると仕方ないなぁ、と高崎のわがままを受け入れてやった。表向きは。
「なら口開けて。食べさせてあげるから」
「ん、あー」
宇都宮の言葉通り素直に高崎が口を開ける。
宇都宮相手に正直に従うあたり、普段の高崎なら考えられないがこれも月の魔力かそれとも団子の魔法か。
何の疑いも持たず団子が口に入るのを待っている高崎に、宇都宮はそのまま身を乗り出すと高崎の唇を塞いで団子の代わりに自分の舌を押し込んでやるのだった。
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