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今日は中秋の名月なので、お月見SSを1本。久しぶりに陽海です。
間に合えばうつたかver.も書きたい、明日でもいいかしら(爆)
このところちょっとご無沙汰してました。いや、生きてはいたんですけど日常と原稿に追われてて(苦笑)原稿はまだ絶賛修羅場中です、今月末までに上げなければいけないというのに…
あと連休に青森まで行ってきたので、レポを上げておきたいのだけど、時間があまり取れないので10月以降にひっそり上げてるかもしれません(爆)
「用意はできたか、山陽」
窓辺で1人先に寛いでいる東海道に呼ばれて、山陽はキッチンから今そっち持ってくよ、と声を返した。
テーブルに載せた黒いトレーの上にはホタテの貝柱を干したものとフグのみりん干し、2つ分のお猪口と中央に窪みのある徳利。徳利の中では透明な液体がゆらゆらと揺れている。
最後におしぼりを脇に載せると、山陽はそれを手にして東海道の元へと急いだ。
「はいよ」
山陽が窓脇にあるサイドテーブルの上にそれを載せるのを見届けると、東海道が手を伸ばして部屋の明りを消す。
途端に、開かれた窓から眩いばかりの月光が室内を白銀に照らし出した。
窓の外に広がる夜空に燦然と輝く満月、ひやりと心地よい風、それにようやく鳴き始めた秋の虫の声。
今日は中秋の名月、いわゆる十五夜だった。
直前まで雨かと危ぶまれていたが、幸いにして予報が外れ今も月は煌々と周囲を照らしている。月明かりの下、山陽はお猪口に徳利の中身を注ぐと最初の1つを東海道に差し出した。
山陽から透明のグラスでできたお猪口を受け取った東海道は、それをそのまま口に運んだ。
最初は試すように、ほんの少しを口に含む。すると、口内にふわりと深みのある味が広がった。東海道の顔色が変わる。
美味い。けして軽くはなく年月をかけた深みを感じるのに、後味はすっきりとして飲みやすい。一口飲むと、また次が欲しくなる。
東海道は無言のままお猪口に残った酒を煽ると、空になったそれを山陽の前に差し出した。おかわり、ということらしい。
山陽は苦笑して、東海道の盃の上で徳利を傾けた。
「お気に召したようで」
当り前だ。それは味にうるさい、というよりも偏重がある東海道のために、山陽が彼の好みに合わせ上越に頼んで蔵元からわざわざ取り寄せてもらったものだ。けして安くはない上に、上越にもお礼にと山口のフグを強請られたので、かなり懐が痛い思いをした。これで満足してもらえなかったら泣くに泣けない。
まあそれでも、東海道が嬉々として酒を口に運んでいるのを見れば全て帳消しで幸せな気分になる。我ながらお手軽なものだと自嘲しながらも、月を見上げながら満足げに酒杯を傾ける東海道の横顔を見つめ山陽は見つめ微笑した。
「あんまり一気に飲むと酔うぞ。飲みやすくても日本酒なんだからな、それ」
「ちゃんと加減して飲んでいる。馬鹿にするな」
飲み口がすっきりしているせいか、水の如く杯を重ねる東海道に山陽が釘を刺す。すると東海道は口を尖らせ反論し、それから急に不敵な笑みを浮かべ、それに、と続けた。
心なしか頬をほんのり赤く染め、身を乗り出して山陽の顔をあおるように見上げる。
「もし私が酔ってもお前が介抱してくれるんだろう?」
見つめてくる東海道の瞳が月の光で蠱惑的に揺らめく。いつになく積極的に挑発してくる東海道に、山陽の目が軽く見開かれ喉が上下した。普段の東海道ならこんな発言有り得ない、もう充分酔っぱらいだ。
だがせっかくのチャンスを無にするほど山陽は愚かではない。すぐに笑みを浮かべると長い指で東海道の顎を持ち上げた。
「酔っ払いの介抱は安くないぜ?」
「私を誰だと思っている。お前の介抱代など、一括で払ってやる」
くすくすと東海道が薄紅の顔で楽しげに笑い、お猪口を置いて山陽の身体にしなだれかかる。その腕が首に絡みつき、体重をかけてくるのに逆らわず、山陽は押し倒される形で東海道の身体を抱き留めた。
月光に照らされた二つの身体が一つの影をなし、それが妖しく揺らめき出すまで、さほどの時間はかからなかった。
窓辺で1人先に寛いでいる東海道に呼ばれて、山陽はキッチンから今そっち持ってくよ、と声を返した。
テーブルに載せた黒いトレーの上にはホタテの貝柱を干したものとフグのみりん干し、2つ分のお猪口と中央に窪みのある徳利。徳利の中では透明な液体がゆらゆらと揺れている。
最後におしぼりを脇に載せると、山陽はそれを手にして東海道の元へと急いだ。
「はいよ」
山陽が窓脇にあるサイドテーブルの上にそれを載せるのを見届けると、東海道が手を伸ばして部屋の明りを消す。
途端に、開かれた窓から眩いばかりの月光が室内を白銀に照らし出した。
窓の外に広がる夜空に燦然と輝く満月、ひやりと心地よい風、それにようやく鳴き始めた秋の虫の声。
今日は中秋の名月、いわゆる十五夜だった。
直前まで雨かと危ぶまれていたが、幸いにして予報が外れ今も月は煌々と周囲を照らしている。月明かりの下、山陽はお猪口に徳利の中身を注ぐと最初の1つを東海道に差し出した。
山陽から透明のグラスでできたお猪口を受け取った東海道は、それをそのまま口に運んだ。
最初は試すように、ほんの少しを口に含む。すると、口内にふわりと深みのある味が広がった。東海道の顔色が変わる。
美味い。けして軽くはなく年月をかけた深みを感じるのに、後味はすっきりとして飲みやすい。一口飲むと、また次が欲しくなる。
東海道は無言のままお猪口に残った酒を煽ると、空になったそれを山陽の前に差し出した。おかわり、ということらしい。
山陽は苦笑して、東海道の盃の上で徳利を傾けた。
「お気に召したようで」
当り前だ。それは味にうるさい、というよりも偏重がある東海道のために、山陽が彼の好みに合わせ上越に頼んで蔵元からわざわざ取り寄せてもらったものだ。けして安くはない上に、上越にもお礼にと山口のフグを強請られたので、かなり懐が痛い思いをした。これで満足してもらえなかったら泣くに泣けない。
まあそれでも、東海道が嬉々として酒を口に運んでいるのを見れば全て帳消しで幸せな気分になる。我ながらお手軽なものだと自嘲しながらも、月を見上げながら満足げに酒杯を傾ける東海道の横顔を見つめ山陽は見つめ微笑した。
「あんまり一気に飲むと酔うぞ。飲みやすくても日本酒なんだからな、それ」
「ちゃんと加減して飲んでいる。馬鹿にするな」
飲み口がすっきりしているせいか、水の如く杯を重ねる東海道に山陽が釘を刺す。すると東海道は口を尖らせ反論し、それから急に不敵な笑みを浮かべ、それに、と続けた。
心なしか頬をほんのり赤く染め、身を乗り出して山陽の顔をあおるように見上げる。
「もし私が酔ってもお前が介抱してくれるんだろう?」
見つめてくる東海道の瞳が月の光で蠱惑的に揺らめく。いつになく積極的に挑発してくる東海道に、山陽の目が軽く見開かれ喉が上下した。普段の東海道ならこんな発言有り得ない、もう充分酔っぱらいだ。
だがせっかくのチャンスを無にするほど山陽は愚かではない。すぐに笑みを浮かべると長い指で東海道の顎を持ち上げた。
「酔っ払いの介抱は安くないぜ?」
「私を誰だと思っている。お前の介抱代など、一括で払ってやる」
くすくすと東海道が薄紅の顔で楽しげに笑い、お猪口を置いて山陽の身体にしなだれかかる。その腕が首に絡みつき、体重をかけてくるのに逆らわず、山陽は押し倒される形で東海道の身体を抱き留めた。
月光に照らされた二つの身体が一つの影をなし、それが妖しく揺らめき出すまで、さほどの時間はかからなかった。
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