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また無駄に長いです……自分的にはこれくらいの分量でSSなんです、すみません。
ちなみに東北上越絡みのではないです、あれは補足を入れ始めたらまた終わらな……(爆)
ちみちみ並行してた3本のウチの1つ。そして最初に書き始めていたはずのSSは未だ終わらない(苦笑)。
なんかあちこちで書き散らかしてとっちらかってる感じです。
今回もまた一応肉体関係前提の、エロ抜きな感じです(苦笑)。あ、いや、前回よりは1%くらいエロい、かも?(笑)(当社比)
ブログで流石に指定かかるSSは書けねぇべさ。
そろそろオフライン用の原稿も始めないといかんですね。早くプロット起こさなきゃ、とか昼間はやる気あるんですが、夜になると動けない(爆)
仕方がないので色々頭の中でまとめつつあるんですが、よく考えると2冊分じゃなくて3冊分あるような。
あれ?(笑)
「うわ、暑~……」
その日も無事終電を終え宿舎に戻ってきた高崎は、玄関の扉を開けた途端に中から押し寄せてきた亜熱帯のような空気に思わずそう声を発していた。
息を吸い込むのさえ苦しいような湿った重たい空気。実際に行ったことはないが、きっとジャングルもこんな感じなのだろう。
今朝出掛ける時には、昨晩から続いた雨がまだしとしとと降っていた。その後も雨は止んだが太陽は表に現れず、一日中どんよりと重苦しい空気が漂っていた。無駄に気温だけが高くてじっとりと汗ばむ、ようするに今日は蒸し暑い一日だったのだ。
当然部屋は締め切って出てきているから、室内の空気はよりいっそう籠もってしまっていて肌にまとわりつく。もうそれだけで不快指数は相当なものだが、だからといって中に入らないわけにはいかないので、高崎は諦めて蒸し風呂のような自室に上がった。
床を歩けば絨毯が湿っているような気がするし、壁も塗れているような感触がある。とりあえずすぐに窓を開けたが、多少気温は下がるものの外気の湿度も似たようなもので、おまけに風がない。
ただ立っているだけでもじわじわと汗が滲みだしてきて、高崎は腕で額を拭った。
まずこのじめじめした空気を払拭して、後は肌の上でべたべたする汗をさっぱりと流したい。
高崎は一度は開いた窓を閉め、リモコンでエアコンの電源を入れると、椅子の背に掛けられていた湿っぽいタオルを掴んでユニットバスに向かった。
10分後。
1日分の汗を流し、肩にタオルをかけながら下着一枚ですっきりとした顔でバスルームを出てきた高崎は、数歩進んだところで立ち止まり首を傾げた。
「……あれ?」
風呂上がりの火照った身体をひんやりとした冷気が出迎えてくれると思っていたのに、室内は相変わらず亜熱帯のままだった。確か風呂に入る前にエアコンをつけたはずなのだが、ボタンを押し間違えたか?
高崎はテーブルに放り出されていたリモコンに手を伸ばし、今度はしっかりと「運転」のボタンを押した。
……が、エアコンはうんともすんともいわなかった。繰り返しボタンを押してみたが、何度試してみても結果は同じ。
エアコンが動き出す気配は全くなかった。
エアコンが故障したのか、それともリモコンが故障したのか。いやもしかすると単なるリモコンの電池が弱っている?ボタンを押すと表示は切り替わるが、どうも動きが鈍いような気がする。
試しに電池を取り替えてみよう、と高崎はリモコンの裏についているフタを開けたところでハタ、と気づいた。
………そういや、前に買った電池、どうしたっけ?
確か前にもテレビのリモコンの電池が切れて、4個入りのを買って半分使った残りがあったはずなのだが。
高崎は雑然とした己の部屋をぐるりと見渡し、自分が保管しそうな棚をのぞいたり、引き出しを開けてみたりした。小さなものを細々としまっている缶も開けてみた。が、求めるものはどこにも収納されていない。
はあ、と高崎は徒労感に見舞われ肩を落とした。部屋は相変わらず蒸した状態で、風呂上がりの身体は熱が抜けずじわじわ汗が噴きだしてくる。家捜しをすれば電池の1つや2つ出てくるだろうが、深夜にもなってその労力は馬鹿らしい。
それくらいならいっそ、買いに行くか誰かに電池を借りてきた方が早い。
コンビニは開いているだろうが、今から着替えて宿舎を出るのも面倒だ。別に近所のコンビニくらいいいじゃん、と思うが最近はJRとしての風紀というか、外部からの見た目を気にかけていて色々うるさく言われているのだ。それなら、ひとまず誰かからもらって、後で返す方が簡単だろう。
とにかくこの状態のままではとてもじゃないが蒸し暑くて眠れない。
うん、と自分で出した結論に納得した高崎は、Tシャツと短パンだけ身につけると、廊下に出た。
この時間でも迷惑をかけない(高崎が気兼ねしない)で、かつ突然来訪してもすぐに電池の予備が出てきそうなところといったら、該当者はさほどいない。京浜東北と宇都宮だ。
その二人のうち借りを作りたくない順でいって、まず京浜東北に高崎は目星をつけた。
サンダル履きをつっかけながら数扉先の部屋のインターホンを押す。ピンポーン、と室内でチャイムが響くのが聞こえた。
だがインターホンの応答はなく、中から人が出てくる気配もない。
……いないのか?もう終電も終わってるだろうに?
念のためもう一度チャイムを鳴らしてしばらく待ってみたが、やはり反応はない。
いないものを待っていても仕方がない。やむなく高崎は踵を返すともう一人の候補の元へと足を運んだ。
心なしかその足取りが重くなるのは致し方ないだろう。何しろ相手はあの宇都宮、なのだから。
たかが電池にどんな交換条件をつけられるやら、わざわざ借りを増やしに行くのは気が引けるがやむを得ない。蒸した室内で湿ったベッドに寝る不快感に比べれば、多分マシだろう。
高崎は宇都宮の部屋の前で立ち止まると、躊躇いがちにインターホンを押した。
まもなく中で「はい」と声がしてドアが開き、見慣れた長身がひょこ、と現れる。
「…高崎?」
「あ…」
宇都宮の顔を確認するのも束の間、高崎は開かれたドアの隙間から流れ出てきた冷気に、思わず顔を緩めた。
「はー…涼しい……」
それは帰宅してからようやく浴びることができた冷風だった。大袈裟と言われるかもしれないが、この風をどれだけ待ち望んでいたことか。汗ばんで湿った頬を冷やす風に、高崎はふにゃりと笑みを零してしばし悦に浸った。
一方、真夜中に突然やってくるなり用件も言わず冷房の風を喜ぶ高崎に、宇都宮は怪訝な顔をしていた。
「……一体何をしにきたの、キミは」
「あー、俺ん家のエアコン、リモコンの電池切れちゃって動かないんだよ。で、予備の電池持ってたら貸してくんないかな、と思ったんだけど……」
その前にちょっと涼ませて、と高崎は宇都宮の横を通り抜け、ひんやりとした室内に潜り込んだ。
「生き返る…」
宇都宮の部屋は部屋の主が暑がりのせいか、かなり冷房が効いている。ずっといると肌寒くなるが、今みたいに暑いところから入ってきた瞬間は天国のようだった。
玄関先でTシャツの裾を持ってパタパタと仰ぎ、部屋の空気をシャツの中に送り込んで至福そうにしている高崎に、宇都宮がドアを閉めながら苦笑した。
「上がってけば?そんなところで涼んでないで」
何だったら泊まってく?と意味ありげに微笑する宇都宮に、高崎はギクリとして引きつった笑みを浮かべた。
「い、いやでも、お前これから寝るところだろ?邪魔したら悪いし、少し涼んだら帰るよ。電池、ある?」
「あるけど、でもエアコン動かないんでしょ?それってリモコンの所為じゃなかったら結局電源入らなくて一緒なんじゃないの?」
「まあ……そうなんだけど……」
宇都宮に現実を指摘されて高崎が口ごもる。彼の言うとおり、リモコンの電池を入れ替えたからといって、あくまでもそれは可能性の1つであって100%エアコンが復活するわけではないのだ。電池を取り替えてみようと思い立ったのは、あくまでもエアコンが故障している、という結論に辿り着きたくないが故の逃避。もし本当にエアコンが故障したのだとしたら、今日だけに限った話ではなくなり当面大変な思いをすることになるだろうから。
今が天国にいるから尚のこと、蒸し暑い自分の部屋で寝付けない夜を過ごす己を想像して、高崎はげんなりとした。
そこに宇都宮の甘い誘惑が高崎の耳を擽る。
「ひとまず今晩が寝られないのは困るんじゃない?見たところ風呂には入ったみたいだし、後は寝るだけなんでしょ?そんなエアコンが付くか付かないかわからない状況より、ここに泊まった方が簡単で快適だとボクは思うけどね」
「や、でもいきなり来たらやっぱ迷惑だと思うし…」
「ボクが泊まっていけ、って言ってるのに?」
宇都宮の誘いに、高崎が遠慮がちに辞退を仄めかす。心地よい室温は確かに魅力的だが、電池を借りるだけならまだしも、泊まったりしたらそれこそ何を要求されるかわからない。
だが宇都宮は玄関ドアを背で塞ぐように立ち、高崎の帰路を閉ざす。その上でにっこりと破顔すると、腕を伸ばして高崎の腰をぐい、と引き寄せた。
警戒、する間もなかった。
バランスを崩された高崎は宇都宮の腕の中に飛び込む形であっけなく捕まる。
獲物を捕獲した宇都宮はその表情に不敵な笑みを加えると、それにね、と高崎の耳に低く囁きかけた。
「こんな格好で、外をうろうろされたら困るんだよね」
言うなり宇都宮の掌が腿の裏側を撫で上げ短パンの上から尻を揉まれて、高崎はビクリと身体を強張らせた。
「ちょ、やめ……」
「こんな脚を剥き出しにして透けそうな薄いTシャツ着て、誘いに来たのかと思ったよ。外に出るのにもう少しマシな格好はないの?」
「風呂上がりだったし、宿舎内で、ちょっと電池借りに来るだけなんだからいいじゃんかよ!お前に指図されるいわれはないだろっ…」
「真夜中で、誰かに襲われでもしたらどうするのさ」
「そんなこと考えてるのなんか、お前だけ、あ………っ」
勝手な言い分を押しつける宇都宮に、高崎はその腕から逃れようともがきながら反論した。が、その抵抗を抑えつけながら宇都宮の手が巧みにTシャツの上から胸を撫でてくる。布地をぷっくりと持ち上げる小さな凝りを布ごと扱かれ、高崎の反抗は喘ぎに変わった。
高崎の敏感な反応に宇都宮は満足げに微笑すると、もう片方の手でTシャツの裾を捲り、背中から短パンの奥に手を潜らせた。ゴムで締められただけのウェストはあっさりとその侵入を許し、直に臀部をまさぐられて高崎は思わず宇都宮に縋り付いた。
「っ……、や、め…」
「この格好のままで、外に出すわけにはいかない」
宇都宮は肩口で声を殺そうとしている高崎の顎を持ち上げ唇を塞いだ。
キスを許してしまえば後はもうなしくずしで。高崎は瞼を閉じると力を抜き、諦めと共に宇都宮の唇を受け入れていくのだった。
のぼせるような快楽から解放され、高崎が宇都宮から離れてベッドの上に仰向けに寝転がると、汗ばんだ肌をひんやりとした風が撫でた。少し冷たいくらいの弱風が、今は火照る身体に心地よい。
「……お前んとこってさ、いつも涼しいよな」
ふと、自分を包む室内の温度が気になって、高崎は隣で横になった宇都宮の方に首を傾けた。
「ここ、設定何度にしてんの?」
「27度だけど」
「え、マジで?」
宇都宮の口から出た室温に、高崎は軽く目を見開いた。自分のところよりも設定が1度高い。暑がりだから、てっきり低めに温度設定しているのだと思っていた。
「なんで27度でこんなに涼しいんだよ。ウチなんて26度だって暑いのに」
心地よい涼風に撫でられながら、納得のいかない高崎が首を傾げると、宇都宮が呆れたように溜息をついた。
「キミの部屋はごちゃごちゃだからだろ。空気が循環してないんだよ」
「そんなの関係あるのか」
「あるよ。障害物が多いと部屋の中に冷たい風が行き渡らないんだよ。大体、エアコンのフィルターだって、キミ掃除してないでしょ。それだけでも風力も電力も変わるんだよ?」
「あー…だって面倒なんだもんよ…」
高崎は咎めるような宇都宮の視線から逃れるようにぐるりと室内に視線を巡らせた。確かに宇都宮の部屋はいつもすっきりと片づいている。ジャケット1つでさえ椅子の背にかかっている、といったこともなく、雑誌やら衣類やらDVDやらが机に床に散らばっている自分の部屋とは大違いだった。
そのせいでいつも宇都宮には掃除しろと注意され、実際見かねて手伝ってくれたり(宇都宮曰く、高崎のが「手伝い」なのだそうだが)もしているのだが、片付けが苦手なものは仕様がない。
「だいたい掃除しないとエアコンにだってホコリは溜まるんだよ。機械なんだから、そういうのが故障の原因になるんだからね」
「わかってるけどさ…」
「わかってるんならちゃんと掃除しなよ」
「そうなんだけどさぁ……」
まるで母親のように小言を言う宇都宮に、高崎が顔を顰め口を尖らせた。
掃除を苦手とする高崎が気乗りしない返事をするのに、宇都宮はにっこりと微笑むとその突き出た唇に触れそうなほどに顔を寄せ、優しく囁いた。
「それとも、毎晩カラダで宿泊費払うからここに泊めてくれ、っていうなら、こっちも考えるけど?」
ちゅ、と軽く唇を啄んでから、どうする?と天使の微笑みで問いかける悪魔に、高崎の顔が引きつった。流石にそれはマズい、ヒトん家に転がり込む迷惑以前の問題で、身体が保たない。
「…いや、それは遠慮します」
「そう?ま、どっちにしろエアコン壊れてたら、修理来るまで暑い部屋で過ごすかここに来るかしかないんだけどね。今この時期エアコン業者は予約いっぱいでなかなか来ないよ?もしかしたら一夏終わるまでダメかもねー」
まるでそうなれば楽しい、とでも言いたげに嬉々として語る宇都宮に、マジかよ…と高崎はげんなりとした声で呟きを漏らした。自らの意志でならまだしも(いや仮に自分の意志が通るのなら、宇都宮の部屋に転がり込むことは絶対にないのだが)、半強制的に、しかも目処の立たない居候なんて考えただけで目の前が真っ暗になる。
高崎はとほほと眉を下げながら、もしかするとしばらく浴びることはできないかもしれない冷風を貴重な思いで肌に受け、瞼を閉じた。
とりあえず、明日は真夏の大掃除になりそうだった。