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明日は宇都宮、東北本線様の宇都宮までの開業記念であります。
と、いうわけでおめでとう!SSを1本UP。あ、もちろんうつたかであります。なんかもう…バカップル!
や、原稿はやってます、でもほらやっぱりお祝いも大事だし、ね?
本来は明日UPするべきなのかもしれないんだけど、話の都合上今日で。
明日はうつたか会でうつたかツアーしてきますv
「ねえ高崎。明日デートしようか」
それは炎天下の駅のホームから逃げ出し、休憩室で涼を取っていた時のことだった。
唐突に隣から投げつけられた提案に、高崎は思わず手にしていた紙パック飲料を強く握り、ストローから噴き出したドリンクに噎せ込んだ。
咄嗟にストローを離し口を閉じたため、噴き出しこそしなかったものの、げほげほ、と止まらない咳に涙目になる。何やってるの、と苦笑しながらぽんぽんと背中をさする宇都宮を、高崎は恨みがましい眼差しで見上げた。
誰の所為だ、と文句をつけたいものの、咳き込んでいるせいですぐには言葉が出ず、ようやく呼吸が落ち着いてから隣に座る相棒にぼやく。
「お前なぁ…何をいきなり言い出すんだよ」
「おや、キミを誘うのにいちいち導入が必要かい?じゃあそこから始めてもいいけど。やあ高崎今日はいい天気だね、調子はどうだい?」
「そこまで白々しく時候の挨拶から始めんなよ」
「だって唐突だっていうなら、最初からじゃないと途中から始めたらどこからだって唐突になっちゃうじゃない」
「そりゃそうなんだけどさ……もういいよ、で、何だよそのデートってのは」
口で対抗しようとしても宇都宮に勝てたためしなどない。すぐに諦めて、高崎は話を最初に戻した。すると宇都宮が心底驚いたように高崎をまじまじと見つめてくる。
「高崎、デートも知らないの?主に男女だけど恋人同士が二人きりでにどこかに出かけたりすることで」
「デートの意味くらい知ってるよ!どこに行くつもりなのか、って聞いてんだ!」
無知を哀れむような眼差しで丁寧に説明をしようとする宇都宮に、高崎はつい苛々とさせられ宇都宮の言葉を遮るように怒鳴った。
だが、怒鳴られたにも関わらず宇都宮がにこりと笑みを浮かべる。
「あは、僕とデートするのは構わないんだ?」
「えっ…そりゃ、場所にもよるけど。あんまり遠出とかは無理かもしんないぞ」
「そうじゃなくて。僕と二人きりでどこかに行くのは却下しないんだね」
ふふ、と極上の笑みを湛えた宇都宮が手を伸ばし高崎の顎に指をかけて持ち上げる。その途端、高崎はぶわっと一気に顔に赤みが広がり、勢いで顎にかかる宇都宮の指をはたき落とした。
「そっ…それはっ………だって、お前と2人で出かけるのなんて今更だろ…っ!そんなとこに意識なんてするか、馬鹿ッ」
「じゃあ、意識して。デートだからね、おしゃべりしながら手を繋いで歩いたりたまにキスしたり夜はエッチしたりしたいんだけど、いい?」
ねぇ?と宇都宮が優美に微笑む。うん、と頷けば明日どころかその場で全部してしまいそうな雰囲気に、高崎は熱くなった頬を指先で擦り、ふいと顔を横に背けた。
「そんなの……別にいつもしてんじゃねぇかよ…」
つまりそれは「是」という意味で。呟いた後に目を伏せがちに一層表情を隠そうとする高崎に、宇都宮は口の端を釣り上げると熱を帯びた頬を軽く指でつついた。
「そんな顔されると今すぐ食べたくなるんだけど」
「ふざけんな、したら殴るぞ」
「全部食べるのは我慢するから、味見だけさせて」
言うなり、宇都宮は高崎の顎を掴み引き上げると薄く開いた唇に唇を押し当てた。高崎は一瞬身体を強ばらせたものの、休憩室に他に誰もいない状況に甘んじて宇都宮の唇を受け入れた。
宇都宮は言葉通り深入りはせず、2、3度ゆっくりと啄むように唇を交わしただけで離れていく。瞼を開くと思いの外宇都宮が優しげに自分を見つめているのに、高崎は怒る気も失せため息一つで済ませた。
「………で」
「うん?」
「どこ行くんだよ。デートするんじゃなかったのかよ、明日」
自分から「デート」と表現するのが照れくさくて、ぶっきらぼうに言い捨てる。
宇都宮はそんな高崎にくすりと笑って、まるで明日の予行演習かのように、隣の膝の上で遊んでいた手を取り自分の指に絡めた。
「そうだな…上野から宇都宮まで行こうか。午後からでもいいよ、上野でご飯食べて、公園散歩して。ああ、大宮で鉄道博物館に寄ってもいいね。夜は宇都宮で夕飯にして、向こうの僕の部屋に泊めてあげる。前もって京浜東北に言っておけば、明後日の朝礼は出ないでも大丈夫だろうから、大宮に戻ってそこから乗り換えるといいよ」
おおざっぱなデートの計画を語る宇都宮に、高崎はきょとん、として首を傾げた。突然デートしようか、と切り出したからには何か計画を立てているのかと思えば、まるで即席で思いつきを口にしているようで、疑問が生じる。
「上野から宇都宮って…どっか行きたいとこがあったわけじゃないのか?」
「んー、どっちかっていうとキミと一緒にいることのが重要、かな」
宇都宮が絡め取った高崎の手を持ち上げ口元に寄せる。ちゅ、と指先に感じた柔らかく濡れた感触に、高崎はビクリと肩を竦めた。
「上野から宇都宮コースじゃ、つまらない?」
「そうじゃねぇけど…お前こそいつも見慣れてる場所でいいのか?」
「僕はいいよ。キミと一緒に見ることなんて滅多にないもの」
キミと、一緒に見るのが大事なんだ。
そうひそりと囁かれた言葉は、しかし高崎の耳には届いていなかった。
「そりゃまあ、そうだけどな。まあ俺はお前がいいならいいけど」
「じゃあ明日。お昼に上野で待ち合わせしよう。お昼どこがいいか、考えといて」
高崎が頷くと、宇都宮は彼にしては珍しく邪気のない笑みをふわりと浮かべた。
「明日、楽しみにしてるね」
「……おう」
その言葉にも何の含みもないのだろう、気持ち悪いくらいに素直な宇都宮の態度に何だか妙に気恥ずかしくなって、高崎は視線を逸らした。二人きりで出掛けることなんて珍しくないのに、何だか初めてデートするみたいで、甘酸っぱい気持ちが広がっていく。
そんな高崎の心境を悟ってか、宇都宮はそっと高崎の頬に空いている手を添わせ、じっと視線を重ねながらわざとゆっくり顔を近づけていった。
「約束の、キス」
視線を戻せば優しくて真っ直ぐな宇都宮の瞳に惹きつけられ、思わずここが休憩室だということも忘れ、高崎は瞼を閉じ宇都宮の唇を待った。唇が触れた瞬間乙女みたいにきゅんと胸が鳴って、それを誤魔化すかのように自分からも唇を押しつけていく。
宇都宮の唇にゆるりと食まれる。鼓動がやけに体内に響いて、ため息が漏れる。舌を交わらせるように深く口付けているわけでもないのに、重なった唇から蕩けていきそうなくらいに心地よくてうっとりとさせられた。唇を離すのが勿体なくて、何度か離れかけたのを追いかけるように高崎は宇都宮の唇を求めた。求められれば宇都宮だってそれに応じて甘いキスを返してくる。
そうして休憩時間が終わるまで、宇都宮と高崎は指切り代わりのキスを交わしたのだった。
無論その間、誰も休憩室の甘い空気を打ち破ることはできず、全員が回れ右をしたのは当然のことである。