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紙/端/国体劇場(青/春/鉄/道)様の二次創作ブログ。 初めていらした方はまず「このブログについて」をごらんください。
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↓のうったんとだるまるをアイコンにして、某つぶやきツールで使ったところ、
フォロワのお一人から「高崎の本体がだるまるだったら萌える」というご意見をいただきまして。

なんかちょっと期待されちゃったので、いそいそとそんなパラレルを書くことにしてみました(笑)
ダメなんだ、人に期待されるとついリクエストにお応えしたくなる体質(爆)

そんなわけでうつたかパラレルで。ギャグにしようと思ったら意外にシリアスになっちゃったよ!
ごめんなさい、ほんの少しだけエロが入るので16歳以下は閲覧をご遠慮いただければと思います。
ブログに載せるのは全年齢にしておきたかったんだけど、ちょっと外せなくて。
あと今ちょっと文章がボロボロになってますが、もう見直さない方向で。書き逃げ上等。

でもって、この話は元ネタ?を提供し、かつものすごく私を煽ってくれた180円さんに捧げることにします。
返品不可。

 「ううう、宇都宮の馬鹿ッ!もうお前なんかしらねぇ!」
 そう叫んで、高崎は部屋を飛び出した。
 それと同時に外の廊下をバタバタと足音が近づいてくるのが、だるまるの耳にも聞こえてくる。
 その足音がちょうどだるまるのいる部屋の前で止まると、次いで荒々しくドアが開けられる。だるまるが身体の向きを変えて玄関を見遣ると、ドアの向こうに現れたのは、予想した通りむすっと膨れっ面をした高崎だった。
 高崎は気が立っているのか、ドカドカと部屋に上がり込むと、テーブルの上で寛いでいただるまるをいきなり抱え上げ、きゅーっと胸に押しつげた。
「だるまるぅ~」
 高崎は何か精神的に追い詰められたりストレスが溜まると、和みたい、癒されたいという願望が出るのか、だるまるを抱きしめる癖がある。
 力任せに抱きしめられて、だるまるは小さな手をぱたぱたとばたつかせた。
「苦しいよ、『高崎』」
 すると、いつもはのほほんとしただるまるが、この時はっきりと言葉を発した。
 それは確かにだるまるの声だが、まるで普段とは異なる口調で。
「ちゃんと見てたから。離しなさい」
 高崎を窘めるような声に、途端に高崎の動きが止まり、静かにだるまるを離す。高崎がだるまるを再びテーブルの上に戻すと、だるまるはよろしい、と身体を揺らして頷いた。
 遥か上を見上げると、高崎の困ったような顔が見える。目が合うと、高崎はしゅん、と頭を垂れ、ぼそぼそとだるまるに向かって呟き出した。
「また宇都宮とケンカした…。あいつと話すと処理が追いつかなくて感情ゲージが振り切れる。調整難しい」
「仕方ないさ、宇都宮の言動が想定範囲外なんだ。お前の対応の限界を越えてるんだよ、あいつは」
 高崎が自分のことをPCのように喩えてしょげると、だるまるも高崎を慰めるように呟く。だるまるにもっと伸ばせる手があったなら、その頭を撫でてやっていたところか。
 項垂れる高崎はさておき、だるまるはどう見ても普段のだるまるではなかった。喋り口といい、別の人格が話しているように思える。
 二人、いや一人と一体が話すその様はまるで上司と部下、あるいは主人と召使いのようであった。この場合、見かけは小さくてもだるまるのが明らかに上司である。
 否、事実だるまると高崎は似たような関係にあった。
 だるまるは高崎に向かってこいこい、と手を振ると自分だけでは自由に移動することができない身体を高崎に持ち上げさせた。
「一応感情回路確認して調整するから。見せてみな」
 だるまるがそう高崎に命令すると、高崎は掌に乗せただるまるを目の高さにまで持ってきた。そっと顔に近づけると、だるまるが短い手を伸ばして目を閉じた高崎の瞼に触れる。
「…ん、回路にエラーはない、大丈夫だ。心配しなくていいよ」
「イエス、マスター」
「今日のやりとりはお前を通して見て聞いてたから。今後対応できるように処理に加えておくよ」
 だるまるはそう言って、高崎の目を瞼の上から少し強く押す。その瞬間、微かに高崎の目の奥が光って、身体がぴくりと震えた。
 だるまるが、高崎の脳に搭載されたCPUに新たな処理を書き込む瞬間だった。
 そう、高崎はアンドロイドだった。自立行動可能感情回路搭載型アンドロイド。動きも言葉遣いも完全にマスターの意図通りこなし、見た目的にもまったくわからない。遠隔制御も可能で、その間操縦者<マスター>はアンドロイドの感覚を通して、あたかも実体験のように感じられる。
 なんと高崎は、だるまるがマスターとなり操縦するアンドロイドだったのだ。
 いや、より正確に表現するならば、「だるまる」に宿った高崎が「アンドロイド高崎」を動かしている、というべきか。
 だるまるの中にいる「意志」ともいうべき存在の正体は、高崎であった。
 いつからそうなってしまったのかは、もう覚えていない。ある日夢の中で上官に似た悪魔に話しかけられ、目が覚めたら高崎は小さなだるまになっていた。そして目の前には眠っている自分の姿が。
 どうやら、高崎はその思考だけが本体から分離し、だるまるに乗り移ってしまっていたようだった。まあ簡単な例えをするなら『鋼の錬金術師』のアルフォンスが鎧に魂を宿していた、あの状態に近い。ただし高崎の身体はそこに存在していたが。
 信じられないことだった。が、何度転がってみても(だるまるの手では頬をつねることはできない)、自分はだるまるの中に入っていた。
 目の前の「高崎」は魂が抜けた途端、機械制御に変わっていた。それ故に高崎はそれを「アンドロイド」と昔見た映画に出てきたロボットの意味合いで名付けた。
 とはいえアナログな操作は必要なく、高崎はだるまるに入りこんだ高崎の魂の意志通りに動く。たとえば「起きろ」と念じれば起き上がる、それは遠隔で操作する大きな人形のようだった。だるまる高崎の思い描いたイメージ通りの行動を、高崎はしてくれた。
 だるまるのその丸い小さい身体では路線を管理することはできないから、仕方なく高崎はそのアンドロイドを使って仕事をしていた。それで普段の生活に支障はない、高崎の身体はほぼ人間の機能を模写しているスグレモノだ。全部を遠隔操作でしなくても、オートにしておけば大概の事は自分で考え応対できる。
 だが、その高崎のAIを超える存在が、よりにもよって最も間近にいた。
 それが宇都宮だった。
 宇都宮は高崎の反応リストにない行動を取る。だるまるの遠隔操作時なら良いが、そうでない時は高崎はどうしていいかわからず、文字通り思考回路が止まる。
 実際に止まってしまうとアンドロイドであることが発覚してしまうので、とりあえずの処置として何か叫んでマスターの元に逃げてくる。高崎のAIは解析によって、組み合わせによる反応を出すことはできるが、新しい反応は生み出せない。
 例えば笑う、という動作を状況によって「泣きながら」や「困りながら」を組み合わせることはできるが、「腹を抱えて笑い転げる」のような新しい動作はマスターがプログラムを組んでやらないとできない。それが機械である高崎の限界だった。
 今もそうで、宇都宮の悪戯に正しい反応を弾き出せなかった高崎は、避難モードに切り替わりだるまるの元に駆け込んできた、というわけだった。
 だるまるはそれをリモートで見ていたわけだが、オートからマニュアルに切り替える前に高崎が逃げ出してきた。何しろ不自然に見えるくらいに止まってしまってはいけないので、避難モードへの切り替えは早いのだ。様子をリモートしている高崎本体が同じように虚を突かれてしまうと、その間にモードが切り替わってしまう。
 だるまるが高崎の電子脳にデータをインプットすると、遠くから別の足音が聞こえ、やはり同じく高崎の部屋の前で止まった。
「宇都宮だ」
 どうやら、高崎とケンカした宇都宮が後を追いかけてきたようだった。
「後は遠隔操作に切り替えて、こっちで操作するから。お前はそのデータを収集して、解析ツールにかけておくこと」
「イエス、マスター」
 だるまるは高崎から手を離すと、手短にそう命令をして高崎に自分をテーブルの上に降ろさせた。
 と、同時に宇都宮がドアを開け室内に入ってきた。
「高崎」
 だるまるは即座に高崎の操縦をオートからマニュアルに切り替え、むすっと拗ねた顔を作ってドアの方へと向けさせた。高崎が振り向くと、宇都宮がこれ見よがしにため息を吐く。
「………んだよ」
「どうしてそう、キミは気が短いんだろうね。あんな悪戯で本気で怒って」
「うっせぇ、来んな馬鹿。お前の顔なんて見たくもねぇ」
 部屋の主の許可なく勝手に部屋に上がり込む宇都宮に、高崎は心底邪険そうに吐き捨てた。だが宇都宮は高崎の言などまったく無視してテーブルの前まで来ると、いきなり高崎の腰を抱き寄せた。
「まあ、そういうところが可愛いんだけどね」
「な…」
「ねえ、わかってる?キミがそういう顔をするから、ついちょっかいをかけたくなるってこと」
 宇都宮が触れそうなくらいに顔を寄せて、囁きかけてくる。甘い響きを伴うその声に心臓がトクン、と鳴り高崎の頬が薄紅に染まると、微笑を浮かべた宇都宮の唇が高崎のそれに押しつけられた。
 口腔に舌が潜り込んでくる感触に僅かにだるまるの身体も震えたが、高崎とのキスに集中している宇都宮には気づかれなかったようだった。
 だるまるの身体に入っていても、高崎の感覚はアンドロイドの身体から伝わってくる。身体が感じたものは魂だけとなっても高崎を震わせた。宇都宮とのキスは、だからだるまるも一緒に痺れている。
 高崎は最初は抵抗するように強ばらせていた腕を、そろそろと宇都宮の首に回させた。すると宇都宮は高崎の腰と肩とを抱き留め、何度も角度を変え高崎の唇を貪ってきた。
 あとは流れるようにベッドに連れ込まれて、宇都宮の好きなようにさせるだけ。
 宇都宮は知らない。今、自分の腕に抱いている高崎の心と体が、二つに分離してしまっている状態にあることなど。
 高崎がだるまるの中に意識が移ってしまった時、宇都宮はすでに今の関係にあった。自身に起きた異常に不安で仕方なかった高崎は、自分自身が分裂してしまったことを宇都宮には伝えたいと何度も思った。だがだるまるの言葉は、他人に対しては片言の表現しかできず、ましてそれでも何とか伝えようとすると、途端に言葉が浮かばなくなり現状を告白することはできなかった。まるで悪魔の制約を受けたみたいだ。
 宇都宮に助けを求められないまま、そのうち事実を伝えることそのものに高崎は不安を抱くようになった。
 だるまるの中にある高崎の魂と、器だけの高崎の身体。こんな半端な状態の高崎を、宇都宮は変わらず愛してくれるのだろうか。
 誰にも言えないまま身体を遠隔で操作している孤独と戦っている高崎にとって、傍にいてくれる宇都宮の存在は精神の拠り所だった。その支えをもし失ってしまったら、高崎は生きていけない。そう思ったら、宇都宮に全てを晒すのが怖くなって何も言えなくなってしまった。
 だからもう、今は宇都宮には何も告げないまま、空の身体を操作して彼と共にいる。
 今日のように悪戯でロボットの思考を止められてヒヤリとすることもたまにあるけれど、概ね平穏に、幸せに過ごせている。それでいい。
 そう信じている、のだけれど。
「はぁ…ん」
 宇都宮の下で高崎の身体が身動ぎ、切ない声が口から零れる。
 宇都宮にもたらされる感覚はリモートですべてだるまるの中にある高崎の心にも伝わる。だからそれがどれだけ気持ちがいいかわかっているし、遠隔でも高崎の身体が起こす行動はその感覚に基づいている。だるまるの中でだって、宇都宮に愛されている、という実感はある。それでも。

 自分の心がそこにない空の器を抱きしめる宇都宮の姿に、胸が痛くなるのはどうしてだろう。

 睦み合う二つの身体を遠くに見つめながら、だるまるの黒いつぶらな瞳からぽとりと小さな雫が零れ落ちた。

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